鹿児島産のオクラ。人と環境に優しい栽培をてんとう虫がお手伝い!?

オクラ-素麺 名産品

オクラといえば、代表的な夏野菜の一つ。
暖かい気候を好む植物で、海外では2000年以上前からエジプトで栽培されていたとされており、熱帯・亜熱帯地域を中心にブラジル・アメリカと世界中で広く栽培されていて、日本に入ってきたのは、幕末~明治初期だそうです。

2020年の統計では、日本国内の43.4%が鹿児島県、その80%が指宿市での生産ということで日本一を続けています。
年間の平均気温が19度前後という温暖な気候が、オクラ栽培に適しているようです。

指宿市のオクラ栽培の歴史

オクラ-畑

指宿市のオクラ栽培は昭和25(1950)年頃から始まり、試行錯誤しながら少しずつ出荷量が増えてきました。
旬が6~10月のオクラですが、温床栽培などでもっと早く出荷できないかの研究もされて、昭和40年代からハウス栽培も本格的に始まりました。
そして、指宿市と隣接する枕崎市や南九州市に広がる農地で行われていた、南薩台地の国営かんがい排水事業が、昭和59(1984)年に完了したのをきっかけに、施設建設が容易になったことで、生産規模が大幅に拡大したのだそうです。

指宿市のオクラの栽培

栽培される主な品種は「ブルースカイ」「ニュースカイ」「ピークファイブ」。

大きく分けて、露地栽培とハウス栽培ものがあります。

ハウス栽培は2月頃から種を播き、4~7月中旬までが収穫期。
2月といえばまだ寒い時期ですが、指宿市は温泉で有名。その温泉の湯を利用している生産者もいるそうです。ハウス内に巡らせた放熱管の中に温泉の湯を流す工夫をして、冬場でもハウス内を20℃前後に保ち、4月出荷を可能にしています。

露地栽培は、3月下旬~5月上旬に種播き、5月下旬~10月が収穫期です。

オクラの実は成長が早く、春は開花後7~10日、最夏期は3~4日。ちょっとでも収穫が遅れると、すぐに大きくなり過ぎるので、タイミングが大事です。
オクラの鞘の長さが9~10cm程度で鮮やかな緑色の時に収穫するのがベスト。
生産者は栽培期間中、とくにピーク時は、暑い昼間に作業を行うと過酷な状況になり体力を消耗するので、日が出る前の早朝から収穫に追われる日々が続きます。

オクラ-パスタ

人と環境に優しいオクラ栽培を、てんとう虫がお手伝い

露地栽培とハウス栽培。「露地栽培は旬の時期に自然のままに作っているけど、ハウス栽培は人工的だから、農薬もいっぱい使っているのでは!?」とお考えの人もいるかもしれませんが、じつは反対だったりします。
簡単にいうと、ハウス栽培の場合はビニールシートなどで作物の周りを囲み、それがバリアとなるので害虫などが侵入しにくくなりますが、露地栽培は無防備な状態です。様々なモノが寄って来て、そのなかには作物を蝕む害虫もいますから、害虫除去剤(農薬)を散布せざるおえないのです。

「農薬」と聞くと顔をしかめる消費者も多いと思いますが、農薬は生産者も、出来れば使いたくない嫌なモノなのです。
まず、農薬を購入するのに経費がかかります。農薬を散布するという労働が増えます。とくに暑い夏は大変です。そしてなにより、散布する生産者自身が農薬をかぶらざるおえず、健康被害が心配されます。

そこで農薬だけに頼らず、てんとう虫などの益虫(害虫と戦う虫)に栽培を手伝ってもらうなど、農作物に有害な病害虫・雑草を、利用可能ないろいろな技術を総合的に組み合わせて防除する方法が考え出されました。
これを「IPM技術」といいます。

オクラ-てんとう虫-ソルゴー
オクラに飛んで来たてんとう虫(左:ソルゴー)

1. オクラ畑の周りや中にソルゴーを植えます

ソルゴーとはイネ科の一年草。糖分の含有量が多いため、昆虫などが集まりやすい植物です。
それを目指して、てんとう虫などの益虫もやって来ます。
ソルゴーの種は単価が安いので生産者の負担が少ないそうです。

2. てんとう虫などの益虫が隣のオクラに移動します

ソルゴーから移動したてんとう虫などの益虫が、オクラに付いて被害を与える害虫(アブラムシなど)を食べて駆除してくれます。
そうすると、農薬を使うとしても益虫に優しいモノになり、その量を減らすこともでき、上手くいく状況の時は、全く農薬を使わずに益虫だけで駆除してくれるのだそうです。

減農薬・無農薬で育てると、エグミや青臭さがないばかりか、歯応えがしっかりしていてうま味が強いオクラになるそうです。

オクラ栽培は、大型の農業機械を使わず、栽培面積が広くなくても始めることができるので、家族経営の小規模な生産者が多いです。
しかし指宿市では、“新しい栽培技術を積極的に取り入れ、皆に伝える”という開かれたシステムが機能しており、「JAいぶすき指宿オクラ部会エコファーマーグループ」を中心にこの「IPM技術」を進め、取り組んでいる生産者も年々増えているそうです。

消費者にも生産者にも環境にも優しいIPM技術。豆類の畑でも取り組みが始まっているようです。

てんとう虫は、サンバにあわせて

踊ってばっかいと思ちょった(古?)

チェストー(ガンバレ)!

てんとう虫!

オクラパウダーも開発されています

指宿市では「豊かな資源が織りなす食と健幸のまち」を掲げ、健康で長生きできるまちづくりに取り組んでいます。
その一環として、指宿市・医療機関・大学・農家・地元企業・加工組合・そして市民が連携した、生活習慣病予防及び介護予防対策としての研究を進め、手軽にオクラの栄養が摂れるように、オクラパウダーを開発しました。
オクラパウダーは、機能性評価試験の結果、ポリフェノール成分を高濃度に含有しており、非常に高い活性酸素除去能(抗酸化能)を有していることがわかったそうです。
また、便通改善効果やダイエット効果、生活習慣病改善効果を示す可能性を有することも示唆されたそうです。

オクラを毎日食べるのは少し難しいところがありますが、パウダーを常備しておくと、サッと水に溶かして飲む、あるいは炒め物やスープ・うどんなどに入れるだけで、トロトロネバネバが味わえるので、便利かもしれませんね。

オクラの栄養と効能については、下記に詳しくまとめてあります。よかったら一緒にお読みください。

オクラ-肉巻き

参考資料:
指宿市 オクラ
独立行政法人農畜産業振興機構 指宿市オクラ産地
オクラからのエール
いぶすき広報誌 vol.154 okura_branding.pdf

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