「だっきょ」と呼ばれ、痩せた土でも美味しく育つ鹿児島のらっきょう

らっきょう-甘酢漬け 名産品

らっきょうは、鹿児島では「だっきょ」と呼ばれ、昔から親しまれてきました。
収穫期の5~6月になると「昨日はだっきょを漬けたら、しったいダレたがよ~(すごく疲れました)」「じゃったとね(そうでしたか)。なら、温泉にでも行って、ゆっくいすればよかが~」というような会話が、県内のあちらこちらで聞かれたりしますね。

今回は、そんな鹿児島で生産されるらっきょうの話です。

鹿児島のらっきょうの生産量は、全国で第2位!

らっきょう-生

らっきょうはユリ科ネギ属の多年草の植物で、原産地の中国では紀元前から栽培されていました。
日本に伝来した時期はハッキリしませんが、9世紀(平安時代)頃から主に薬用として用いられていたという記録があるそうです。
野菜として普及したのは江戸時代。
その頃から、水はけの良すぎるシラス台地が広がっている鹿児島本土は、昔は稲作などには不向きでしたが、らっきょうは痩せた土壌でも育つので、各家庭の畑で栽培されていたようです。

鹿児島・薩摩半島の西岸に、日本三大砂丘の一つに数えられている吹上浜(吹上砂丘)があります。
南北約47kmに渡って続く日本一長い砂丘で、そこから望む東シナ海に沈む夕日がとても綺麗で、景観は素晴らしいのですが、土壌が砂地、そしてすぐシラス台地という場所なので、戦前まで「農業不毛の地」と呼ばれていました。
しかし、乾いた土地を好むらっきょうだけは、スクスクと育ちました。
スクスクどころか、らっきょうにとってもかなりの好環境らしく、質の良いらっきょうが栽培できるということで、1970年代に生産が拡大しました。

現在、国内のらっきょうの生産量は、1位が鳥取県、2位が鹿児島県、3位が宮崎県となっていて、この3県で全体の75%程を占めています。それも2015年まで鹿児島県が1位だったらしく、鳥取県との差は拮抗しています。
そんなに知られていませんが(汗)、鹿児島県はらっきょうの一大産地なんですね~。

鹿児島県内での主な産地は、南さつま市、薩摩川内市、曽於市、そして島らっきょうを栽培しているトカラ列島や奄美地方です。

吹上砂丘で生産される砂らっきょう

らっきょう畑-吹上浜
らっきょう畑

らっきょうとして売られている部分は、鱗茎(養分を蓄えて葉の根本が膨らんだ部分)です。
砂丘地は水はけが良く、らっきょうにストレスがかからないからなのか、吹上砂丘で生産される砂らっきょうは、香りが良く白い果肉が厚い大玉で、「白い宝石」と呼ばれることもあるそうです。
皮の一枚一枚の層が薄くなりそれが何重にも重なることで、シャキシャキとした歯応えのある食感になり、独特の甘みを持っているということで、生食でも美味しくいただけます。

しかし、らっきょうが砂丘地栽培に向いているとはいえ、ほったらかしで育てたら、そんなに白い大玉が簡単に出来はしません。
そこには、生産者さんの工夫や努力があります。
らっきょうは種で育てるわけではなく、前年のらっきょうの鱗茎を親として育てます。
毎年8~9月に植え付けを始め、そこから芽が出て晩秋の頃に紫色の花が咲き「浜辺のラベンダー畑」のようになります。
それから寒い冬を越し、翌年の春になると葉が茂り鱗茎に養分が蓄えられてふっくらと成長します。そして5~6月、葉が衰え始めると収穫期を迎えます。

その間、天候などに左右され、台風が襲来したり雨が続く日などがあるので、こまめに見守りながら、良質な土の状態を保つために草取りや追肥をするといった作業が続きます。
収穫も、らっきょうの根は強いため、一度トラクターで下の根を掘り起こしてから、ほとんど手作業で丁寧に収穫するそうで、とても手間のかかる作業なのだそうです。

らっきょう-花-2
らっきょうの花

らっきょうは葉も食べられる

根と葉が付いた状態で売られている若採りのエシャレットや、道の駅などで葉付きのらっきょうを購入したことがある人もおられるでしょう。この葉は食べていいのか捨てた方がいいのか、悩まれたりしてはいませんか?
ネギ属のらっきょうの葉は、普通に食べられます。
ニラやネギと同じ調理で、みじん切りにして醤油漬けや餃子・さつま揚げの具に、味噌汁に入れたり、他の野菜と一緒に炒めたりすると美味しいので、捨てずに食べる方がオトクです。

トカラ列島や奄美地方で栽培されているらっきょう

鹿児島本土で栽培されているらっきょうは、日本で一番多く栽培されている「ラクダ系」という品種ですが、トカラ列島や奄美地方で栽培されているらっきょうは、主に島らっきょうになります。
島らっきょうというと、沖縄では?と思われるかもしれませんが、鹿児島県でも栽培されているんですね~。

温暖な気候のなか、農薬や除草剤などを使わずに育てています。
黒潮海流の潮風を受けて、ミネラル豊富な土壌で栽培されている島らっきょうは、小ぶりで細長くピリッとした香味が強いのが特徴。
島らっきょうには、普通のらっきょうと比べると、ミネラル類のカリウム・カルシウム・鉄分が多く含まれているそうです。

甘酢漬けにしてもいいですが、島では軽く塩で揉み、生のままで酢味噌やおかか和えで、また、天ぷらにして塩をつけて食べる人が多いそう。美味しくて、酒のつまみにもなります。

島らっきょう-天ぷら

鹿児島では、らっきょうの加工品にも力を入れ始めています

鹿児島にはらっきょう好きが多く、まだまだらっきょうを生で買って、そのまま食べたり自宅で漬けたりする人も沢山いらっしゃるので、道の駅などに入荷するとすぐに売り切れてしまうほど人気があるそうです。
これはこれで、とても素晴らしいことなのですが、県外に生らっきょうが出荷されているのは、京浜地域や京阪神地域ぐらいなのだとか。
このことも、生産量が全国第2位なのに、あまり知られていないことの理由のひとつでもあるようです。

「せっかく生産者が、丹精込めて美味しいらっきょうを育てているのだから、少しでも多くの人に知っていただき、食べていただこう!」ということで、「らっきょうの味噌漬け」や「ドレッシング」などの加工生産も増えてきています。
生らっきょうは、旬の時期に限られた人が購入するだけになりますが、加工品は、旬の時期でなくても広い地域の方々に食べていただけるので、かごしまブランドとして知名度が上がるかも?という取り組みのようです。

鹿児島には他にも特産品が沢山あるので、それと合わせて「黒酢漬け」や「黒砂糖漬け」、鹿児島の甘めの醤油で漬けた「醤油漬け」などが、お土産などで気軽に買ってもらえるようになると良いですね~。

砂丘らっきょう-加工品
砂丘らっきょうの黒酢漬け © P.K.N

鹿児島のだっきょは
うんまかでなぁ~

だからよ!

らっきょうの栄養と効能については、下記に詳しくまとめてあります。よかったら一緒にどうぞ。

参考資料:
農林水産省 らっきょうの主な生産地
鹿児島県 かごしまのらっきょう
おひさまとくだもの 砂丘らっきょう
ガンバリーナらっきょう村
ふるさとチョイス 奄美の島らっきょう
食べチョク トカラ列島特産 潮風 島らっきょう
らっきょう市場 鹿児島編

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