喉の痛みの緩和に風邪予防に、昔から食べられてきた鹿児島の金柑

金柑-樹-実 名産品

金柑(キンカン )というと「のど飴」のイメージが強いですね。
昔から、喉や扁桃腺の痛み緩和や風邪予防に効果があるということで、金橘(きんきつ)という名前で民間薬としても食べられてきました。
温暖な地・鹿児島でも金柑の栽培が盛んです。

柑橘系のなかで一番小さい金柑

金柑-実-種見せ-4

金柑は、ミカン科キンカン属の常緑低木で、柑橘系の中では一番小さい果実です。

温暖な地域でよく育ち、また比較的育てやすい樹ということで、昔から鹿児島でも庭や鉢に植えている人も多いですね。
夏から秋にかけ咲く小さい白い花も可愛らしく、果実は食用になりおまけに風邪予防にもなるということで人気があるようです。

金柑といえば、宮崎県が生産するブランド金柑「たまたま」「たまたまエクセレント」が有名で、国内生産量も1位ですが、2位の鹿児島県も美味しさでは全然負けてはいません。
一昔前の金柑は「酸っぱい・苦い」というイメージがあり、もっぱら砂糖漬けや甘露煮にして食べられていました。
管理人が子どもの頃、母も毎年甘露煮を作っていましたが、甘さの中に苦さを感じ、あまり好きではありませんでしたね。
しかし最近の金柑は、生で食べてもそんなに苦さを感じることはなく、甘くなり食べやすくなっています。
これは、品種改良というより、栽培の仕方に工夫がされてきたからのようです。

40年ほど前からハウスでの栽培が導入されるようになり、ハウスで栽培することで、樹上で完熟するまで育てることが可能になりました。
今では温度管理もできるハウスもありますしね。
そうすると、果実は大きく糖度は高くなり、生でも美味しく食べられる金柑が育つようになったのだそうです。

鹿児島では、薩摩川内市・さつま町・南さつま市・南九州市・枕崎市・肝付郡など、県内の広い地域で栽培されています。
露地栽培とハウス栽培が行われており、露地栽培は12月上旬~1月下旬、ハウス栽培が11月中旬~3月上旬に出荷されます。
正月のおせちにも昔から甘露煮が入っていて、丸くて黄色い金柑が彩りを添えてくれていますね。

金柑-おせち

美味しい金柑を作るための栽培の工夫

育てやすい樹ですが、そのまま放っておいても美味しい金柑ができる、というほど簡単なわけではありません。
そこには栽培するにあたって、工夫や努力が必要です。

土壌作り

金柑は水はけの良い土壌を好みます。
その点は鹿児島は適した地ですが、他の作物と同様、露地でもハウス栽培であっても、良い果実を育てるためには堆肥づくりが大切です。
植物活性を高めるために、土着菌による有機肥料づくりや植物などから採取した酵素を活用するなどして、できる限り減農薬で金柑に適した土壌を作ります。

金柑樹への水やり

金柑は水はけの良い土壌を好みますが、乾燥には弱いところがあります。
梅雨時や大雨・台風襲来の時は水はけをよくし、暑い夏の時期や晴天続きの時は水やりをするといったように、常に天候を観ながら適切な土壌になるように気をつけながら育てています。

摘花・摘果

金柑は7~9月に次々と小さい白い花を咲かせます。
そのままにしていたらものすごく多くの果実が成りますが、果実自体が小さくあまり美味しくはありません。
下垂した弱い枝によく着果したものは果実が大きくなり、勢いのある枝に付いた果実は小さいという傾向があるそうです。
大きな果実を収穫するために枝を誘引して下垂させ、早く咲いた花に着果させ、後は適宜摘花する作業を行います。
それでも着果数が多い場合、または傷のついたものやサイズが小さいものは、状況に応じて摘果していきます。

金柑-花_実
金柑の花と若い実

剪定して日当たりをよくする

金柑は常緑低木ですが放っておくとどんどん背が伸びますので、管理や収穫がやりやすい高さに剪定します。

また、金柑は暖かい場所で、たくさん日光に当たることで甘さが増していきます。
果実に日光がよく当たって風通しが良い環境にするために、注意深く観察し、邪魔になるような枝や葉をこまめに剪定する作業も行います。

収穫

収穫はだいたい、露地栽培で花が咲いてから150日、ハウス栽培は樹上で果実が完熟する、花が咲いてから210日ぐらいで収穫します。
金柑の実の状態を見極めながら、一玉ずつ丁寧に手作業で鋏で切り、収穫していくのだそうです。

美味しいだけでなく、食の安心・安全のために

栽培方法や管理の新しい情報の共有のために、定期的に管理講習会を開いている地区もあります。また、「かごしまの農林水産物認定(食の安心・安全に関して生産から販売まで環境に配慮した取り組みをしているか)」や「JGAP(食の安心・安全や環境保全に取り組む農場に与えられる認証)」をしっかりとした管理で認定・認証されている農場もあります。

基本的には、露地栽培ものは甘露煮やハチミツ漬けなどの加工用に、樹上で実が完熟するまで育てるハウス栽培ものは生食用に栽培されています。
もちろん、どちらも生でも食べられ、甘露煮やジャムなどに調理できます。

上記のような工夫をし手間ひまかけて生産された金柑は、全体的に管理人が子どもの頃食べていた金柑より、えぐみ・苦味が少なく甘さが増してきているように感じますね。

鹿児島県のブランド金柑

鹿児島県がブランド農産物に認定している金柑もあります。

春姫

春姫はJA南さつまで生産されている完熟金柑。
出荷基準が厳しく定められ、ハウス栽培で、樹上で完熟したものだけを収穫しその中でも糖度16度以上で、ツヤがあり形の綺麗なものだけを選別し「春姫」として出荷しています。
えぐみや苦味が少なく、糖度が16度以上あるので濃厚な甘みと適度な酸味があり、生でも食べやすいのが特徴です。
甘いだけでなく、柑橘系らしい酸っぱさも感じられるということで人気があります。
開花から210日以上経過した果実になるので、出荷は1月以降になります。

いりき

薩摩川内市の入来地区を中心にJA北さつまで生産されている完熟金柑。
「いりき」は入来町の名前から付けられました。
こちらも出荷最低基準が厳しく定められていて、ハウス栽培で樹上で完熟したものだけを収穫し、その中でも最低糖度が14度で、ツヤ・形の綺麗なものだけを選別し出荷していますが、なかには糖度20度以上あるものもあるそうです。
旬の出荷時期は1~2月上旬。

どちらも生でパクッと食べられるほど皮が柔らかく、しっかりとした甘みの中に程よい酸味があり、ジューシーな味わいです。
あまり一般的なスーパーで見かけることはありませんが、果物専門店やデパート、また通販で購入可能です。

金柑ちゃんのなかには

あたしと同じぐらい大きいのもあるから

びっくい!だよ

そいは、大きかなあ!

皮ごと食べられる金柑のメリット

柑橘系の果実はいろいろありますが、ほとんどが皮を剥いて中身を食べますね。
ですが、金柑は皮が柔らかいので皮ごと食べられます。その皮にはいろいろ健康に役立つ栄養素が含まれているのだそうです。

皮に含まれるヘスペリジンという成分には、喉や扁桃腺の炎症を抑え痛みを軽減する作用、シネフリンには気管支の筋肉弛緩作用で咳止め効果があるとされています。

もう一つがβ-クリプトサンチン。これはカロチノイドの一種で、抗酸化作用のある色素成分です。
β-クリプトサンチンは、体内で必要に応じてビタミンAに変換され、視覚・皮膚・粘膜の正常化、骨粗しょう症の予防や脂質代謝の改善などに働くという、とても優れた成分です。
温州ミカンに特異的に豊富に含まれていますが、多くが外皮部分にあるのだそう。
金柑には温州ミカンほどは含まれていないのですが、皮ごと食べる金柑は、効率よく摂取できるというメリットがあります。

「生」で食べるメリット

えぐみ・苦味が少なく酸っぱさも抑えられ、糖度が高くなり「生」でも美味しく食べられる金柑が増えていることは、栄養面からみても良いことがあります。
「生」で食べるメリットとしては、なんといっても豊富に含まれるビタミンCを摂ることができる!ということですね。

他にも金柑には様々な栄養素が含まれていて、それを下記にまとめてあります。よかったら一緒にお読みください。

金柑は種があるので、少し食べにくいところがありますが、品種改良で「種無し」も開発されています。
小さいお子様やご高齢の方でも食べやすいですし、種が無いとジャムやコンポートなどに調理するにも種取りの手間がかからなくて便利です。

金柑酒を作ったり、スライスしてサラダに加えたり、サワーなどのドリンクに入れたりするのも爽やかな感じになりオススメです。
ぜひ、冬の旬な果物のひとつとして、金柑を味わってみてください。

金柑-飲み物

参考資料:
鹿児島県/かごしまのきんかん
かごしまの食 ハウスきんかん
松田農場 きんかん
おやまファーム きんかん
J&Yファーム
有限会社 清木場果樹園
丸山果樹園
豊洲市場 春姫

タイトルとURLをコピーしました