鹿児島ではトッピーの名で親しまれている海上を滑空する魚・トビウオ

トビウオ-揚げ物 水産物

鹿児島本港・指宿と種子島・屋久島を結ぶ高速船(ジェットフォイル)の名前は「トッピー 」&「ロケット」。
「ロケット」は種子島に種子島宇宙センターの大型ロケットの射場があるからですね。
「トッピー 」は、鹿児島の方言でトビウオのことをトッピーと呼ぶことに由来しています。
トビウオは漢字で「飛魚」と書くように、海上を飛ぶ魚として有名です。そのトビウオを種子島・屋久島の近海で、よく見かけることから名付けられました。
運が良いと、船上からも海上を滑空するトビウオが見えるそうです。

トビウオはなぜ海上を飛ぶのか?

海上を飛ぶ-トビウオ-3

トビウオは、ダツ目トビウオ科の青魚。
亜熱帯から温帯にかけて、世界では50種類ほど、日本近海には20~30種類が生息して回遊しています。
トビウオが海上を滑空する理由には諸説ありますが「マグロやカツオ・シイラから逃げるために身につけた技」というのが最も有力でしょう。

体型は細長い紡錘形で断面は逆三角形。胸ビレが著しく長く大きく、尾ビレは深く切れ込んで二股になっており、とくに下端が長いです。
腹ビレも大きい種類もいて、海上を飛んでいる時に翼が4枚あるように見えるそうです。
身体を出来るだけ軽くするために、トビウオには胃が無く腸も短く、食べたものが体に残らないようになっています。骨もスカスカで、運動量も多いので脂肪もほとんどありません。
ただ海上に飛び出すだけでなく、飛距離を伸ばすために進化を遂げた、とてもストイックな魚なのです。

水上に飛び上がる時は、水中を時速70kmほどで泳ぎ助走をつけ、尾ビレで水面を叩くことによって海上に飛び出します。
そして、風上に向かって海面より2mほど上を時速35kmぐらいで、100~300mは余裕で滑空するのだそうです。
しかも、海上に出ると今度はカツオドリなどに狙われるので、それからも逃げるために、滑空中でも急ブレーキをかけることや方向転換も出来るという凄い技も持っています。

カツオドリ-トビウオ
カツオドリから逃げるトビウオ

トビウオの最長飛行映像が、ギネス世界記録に認定!

余談ですが、2008年にNHK『ダーウィンが来た!」の取材班が撮影したトビウオの飛行映像が、最長飛行として2019年にギネス世界記録に認定されたそうです。
映像は、鹿児島県の口永良部島から屋久島に向かう屋久島町営「フェリー太陽」から撮られたもので、海上に飛び出したトビウオが45秒間(推定400m)にわたって飛び続けるのを一部始終とらえたもの。
長距離飛行トビウオの個体がアップサイズでの待ち受け画角の中央から飛び出したこと、そのトビウオがフェリーとほぼ並行に飛び続けたことなど、数々の偶然ともいえる幸運と、そして取材班の執念がとらえた、奇跡の映像なのだそうです。
参考:Note トビウオがギネス世界記録!?

鹿児島のトビウオの漁獲

トビウオは季節回遊魚なので、だいたい春先から夏にかけて日本近海を北上して産卵し、秋に南下します。
ですので地域によって獲れる時期が変わります。

鹿児島では、奄美群島・トカラ列島・屋久島・種子島などの沖合に、本土はまだ寒い2月に姿を現します。
主に最初に獲れ始めるのは、体長35cmぐらいのトビウオとしては大型のハマトビウオ。
鮮度が良く品質管理も徹底されていて、東京市場などでも高い評価を得ているそうです。

黒潮に乗ってやって来ることもあり、黒潮が流れる屋久島や種子島などで獲れるトビウオは、ハマトビウオだけでなく、小型のニジトビウオやホソアオトビなどが春に、6月になると大型のオオメナツトビやチャバネトビウオ・カラストビウオなどもやってきて、14種類ほどが漁獲されるそうです。
そんなわけで、昔から塩干し品などに加工され保存食としても重宝されてきました。
今も鹿児島のトビウオ生産量は全国でもトップクラスで、鹿児島県選定の「かごしま旬の魚(春)」にも選ばれています。

トビウオ-刺身の盛り合わせ
トビウオを含む、刺身の盛り合わせ

鹿児島でのトビウオ漁獲方法

鹿児島の屋久島近海でのトビウオ漁は、慶長(1596〜1614)年間から始まったといわれ、長い歴史があります。

刺網や定置網でも漁獲していますが、最大の漁獲量を誇るのが、種子島・屋久島地域で行われている、昭和30(1955)年頃に種子島の漁師が考案した「トビウオロープ曳き漁業」。

「トビウオロープ曳き漁業」は、本船(3~5名)と片船(1名)の2隻で行う方法です。
本船に積んだ網を海に入れ、それを片船が直線状に約1.5km曳き網を張り、両船が円を描くように網を曳き魚を囲い込みます。
ここからが漁師の腕の見せ所ということで、片船に乗る漁師が海に飛び込み、トビウオが網の外に逃げないように直接囲い込みます。こうすることで囲い込まれた魚を、本船から張られた網を袋状に縛り上げることで漁獲します。これを1日に5〜6回行うそうです。

漁獲されたトビウオは、生のまま刺身・揚げ物や焼き物・煮物に。また、塩干しなどに加工されたり、さつま揚げやつみれ汁に入れるすり身として食べられています。
脂肪分の少ないトビウオの刺身は、弾力がありコリコリとして歯応えも良く、格別な美味しさです。

トビウオ-さつま揚げ

「アゴ」とも呼ばれるトビウオの出汁

回遊魚であるトビウオは春先に九州南方に姿を現した後も北上を続け産卵し、青森沖あたりから南下し始めます。
ですので、各地で刺身でも食べられていますが、伊豆諸島では「くさや」、北九州から山陰地方などの日本海側では煮干し・焼き干しでよく食べられ、島根県にはすり身を使った「あご野焼き」などの特産品もあります。

また、北九州から山陰地方にかけては、トビウオのことを「アゴ」とも言い、高タンパク質で脂肪が少ないことから青臭さがなく、すっきりとした風味豊かな上品な出汁が取れると、人気があります。

鹿児島は鰹節の生産が多いので、アゴ(トビウオ)の出汁はあまり目立ちませんが、鹿児島でもしっかり作られています。
一般的には「焼きアゴ」や「煮干しアゴ」で出汁をとることが多いですが、鹿児島では鰹節生産のノウハウを活かし、燻製にした「アゴ節」を作っているところもあります。
また、アゴのうま味はグルタミン酸が多いですが、それにイノシン酸の鰹節、グルタミン酸・グアニル酸の干し椎茸(どんこ)などをブレンドして、奥深い格別な美味しさの出汁も商品として販売されています。
出汁粉というトビウオの骨まで粉砕した商品もあり、これならカルシウムも摂れますね。

トビウオ-アゴ節
アゴ節

意外と身近にいるトビウオ

上記の通りトビウオは、海上に飛び出し出来るだけ長く滑空するために、ヒレを翼のように伸ばし軽やかな体をストイックに維持している、アスリートのような魚。

刺身で食べると、翼のような長いヒレを活かして美しい姿造りにして供されることが多く、コリコリとした上品な美味しさが楽しめます。
青臭さも少なくクセのない味わいで、塩焼きや揚げ物・煮魚になったり、薄塩の一夜干しも美味しいと人気があります。
また、お寿司でよく見かけるオレンジの小さな粒々のトビコは、トビウオの卵です。

日頃気づかないうちに、意外とよく食べている魚なんですね~

トビウオの栄養と効能については、下記に詳しくまとめてありますので、よかったら一緒にお読みください。

何しちょんのぉ?

葉っぱを広げてクルクル回したら
飛べるんじゃなかけ?

ち思って…(汗)

トッピー-停泊中
停泊中のジェットフォイル・トッピー

参考資料:
JF鹿児島漁連 かごしまのさかな.com
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑 トビウオ
全国のプライドフィッシュ
かごしまの畜産物・水産物トビウオ

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