サツマイモ(カライモ)。江戸時代には飢饉から人々を救った大切な芋

サツマイモ-焼き芋 名産品

鹿児島県の名産品といえば、最初にサツマイモを思い浮かべる人も多いと思います。
なにしろ名前が「サツマイモ」ですから。
サツマイモはヒルガオ科サツマイモ属の植物の根の部分が大きくなった芋で、原産地は中米ですが、今では世界の約9割がアジアで作られています。

サツマイモの歴史

サツマイモ-畑収穫

鹿児島には江戸時代の1698年に種子島久基が琉球(沖縄)に使いを出し、唐(中国)から伝わった芋を持ち帰ったのが最初とされ、1705年に山川の船乗り・前田利右衛門が、琉球から持ち帰り栽培が始まったとされています。
鹿児島本土は姶良カルデラなどのシラス層で出来ていて、真ん中に桜島という今も時折噴煙を上げる活火山があります。
水はけが良すぎる痩せた土地で稲作には不向きだったのですが、逆に水はけの良い土壌を好み、乾燥に強く20~30℃が適温のサツマイモにはとても合っていたようで、スクスクと育ち、薩摩藩にとっても重要な作物になりました。
鹿児島は昔から台風もよく通りますが、サツマイモは土の中にできる芋なので、それもよかったようです。
唐(中国)から琉球(沖縄)→薩摩に伝わった芋なので、鹿児島では「カライモ」あるいは「甘藷(かんしょ)」と呼ばれています。

1733~34年に起きた享保の大飢饉の対策に苦慮していた将軍・徳川吉宗が、青木昆陽に薩摩の芋の試作栽培をさせたところ成功したので、関東から西日本を中心に栽培されるようになり、その後に起こる飢饉において多くの人々の命を救ってきました。
薩摩からきた芋ということで「サツマイモ」と呼ばれるようになりました。

鹿児島のサツマイモの用途

今でも鹿児島県での生産量は、全国の35%ほどになり、日本一を誇っています。

現在はバイオ苗100%利用なので、色も形もすぐれたものが、5月の超早掘りを皮切りにほぼ周年供給されています。
その用途内訳ですが、生食用(5%)、アルコール用(47%)、甘藷でん粉用(35%)、加工食品用(11%)、その他(2%)となっています(出典:農林水産省「かんしょの用途別消費 平成29年産都道府県別消費状況」より)。

私がびっくりしたのは、この内訳です。「芋焼酎の原料量は多いだろうなあ」とは想像していたのですが「甘藷でん粉」って何?。考えたことがありませんでした。
調べてみたら、甘藷でん粉とは日常生活の中で直接目にすることはほとんどありませんが、清涼飲料水などに使われている果糖ブドウ糖・水あめなどの甘味料・お菓子や麺類などの食品、また加工でん粉として医療用や工業用に使われているのだそうです。
昔は千葉など全国でも作られていましたが、今では鹿児島県のみで作られているようです。
さつま揚げなどの練り製品にも使用されていて、おもてだって見えないところでも活躍していたんですね~。……いつも食べてるじゃん!(笑)

鹿児島での青果用サツマイモ

サツマイモ-3種類

鹿児島県の各地で生産されていますが、主要な産地は指宿・川辺・頴娃・知覧・曽於・肝属・熊毛(種子島)などです。

今回は、青果用・加工(スイーツなど)食品を中心に、鹿児島県で生産されている主なサツマイモの品種を紹介します。

高系14号・紅さつま

高系14号は、成長が早く優れた肥大性で早掘りできる品種。皮は赤色で厚く、皮近くの果肉はしっとりとし特に甘みが強いです。
その高系14号を鹿児島の気候風土に合うように改良したのが紅さつま。
焼き芋にするとほくほくとした肉質で、ほどよく甘みもあります。
指宿方面で栽培されるものが多く、ハウスでの栽培で早いものは大体6月上旬から収穫が始まり、7~9月頃が出荷のピークになるようです。

さつま金時(ベニアズマ)

栗のようにホクホクとし、サッパリとした甘みが特徴。1ヶ月以上貯蔵すると甘さがどんどん増していきます。
繊維が少ない粉質で果肉はクリーム色。収穫期は8~11月。食べ頃は12~翌6月。
蒸し芋や天ぷらに適しています。

紅隼人

皮の色は紅いろですが、肉色は鮮やかなオレンジ色。色で分かるようにカロチンの含有量が人参に匹敵するくらい多いのが特徴です。
主にスイートポテトなどのお菓子や料理に使われます。

安納芋

長年、種子島の安納地域だけで栽培されてきたサツマイモ。
種子島の、ミネラルを多く含む空気や栄養たっぷりな土壌の中で、独特な甘みや食感の芋に育ちました。
もともと栽培しにくく生産量が少なかったので、安納地域の農家内で消費されていましたが、平成10年に皮が紅色の「安納紅」と皮が淡黄色の「安納こがね」が品種登録され、イッキに人気が高まりました。
焼き芋にすると、ねっとりとして蜜が出るほど甘いのが特徴で、栽培地域も拡大しています。
旬は10月中旬~1月頃。種類も上記2つに加え「安納こがね」が増え3種類になっています。

紅はるか

2010年に品種登録された、比較的新しい品種です。
ねっとり系の中で、安納芋と人気を二分しているという人気のサツマイモ。
他の芋より「はるか」に甘いというのが名前の由来とか。
焼き芋にすると糖度が60度以上になって、甘くてしっとりとした食感になり、滑らかな口当たりが人気の理由だそうです。
鹿児島での収穫期は10月頃で、約1ヶ月ほど熟成させ、食べ頃は11月下旬~1月頃です。

種子島ゴールド

外の皮色がゴールド、中はやや白みが混ざった紫色ですが、蒸かすと鮮やかな紫色になります。
これも2010年に品種登録されました。
味はやや控えめな甘さですが、皮が柔らかくそのまま食べることができ、冷めても飽きずに食べることができます。
紫色は抗酸化作用の強いポリフェノールのアントシアニン。
鮮やかな紫色を活かして、スイーツの餡や芋かりんとうなどにも加工されています。

コガネセンガン

淡いクリーム色で、芋焼酎の原料として改良された品種ですが、適度な糖度とでん粉を含有していて、蒸かして食べても美味しいですし、芋けんぴなどにも加工されています。

オイはいつも、

液体で飲んじょっと!

芋じょちゅう(焼酎)ち、

言わんかい!

サツマイモの栄養価

カロリーは米や小麦の3分の1程度で、腹持ちがよく体に溜まりにくいそうです。
そして食物繊維が豊富。含まれるデンプン質が膜を作り保護するので、ビタミンCが加熱しても壊れにくいことや、摂りすぎた塩分を体外に排泄する働きを持つカリウムを多く含んでいるので、健康・美容食として注目されています。

サツマイモの栄養価や保存方法など、下記にもまとめてあります。

鹿児島県の名産物に黒豚がありますが、この飼料にも配合され、また、サツマイモのツル茎は栄養豊富なので黒毛和牛の飼料にも使われているそうです。
サツマイモは、焼いたり蒸したりとそのまま料理として食べるのも美味しいですが、一般に知られていないところでも、人々の食生活を支えている重要な生産物なのですね。

サツマイモ-ガネ

参考資料:
鹿児島青果株式会社
指宿市 さつまいも
alic 農畜産業振興機構
AGRI PICK サツマイモ
お役立ち!季節の耳より情報局

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