鹿児島の銘菓・かるかん(軽羹)。山芋を原料に栄養豊富な伝統菓子

かるかん-1 製造物

鹿児島に住んでいて 「かるかんを知らない人はまずいないのでは?」というくらい鹿児島では有名な和菓子です。
年間を通して、現在も冠婚葬祭の贈答菓子として、また旅のお土産としてもとても人気があります。

かるかんの歴史

1686~1715年頃に薩摩藩で誕生したという記録があり、それを島津斉彬が江戸から招聘した明石出身の菓子職人・八島六兵衛によって改良され、今のお菓子になったといわれています。

原料は自然薯(ヤマノイモ)・砂糖・酢・かるかん粉・水と、とてもシンプル。

鹿児島の本土の多くが姶良カルデラなどのシラス台地であるため、非常に水はけがよく痩せた土地であるうえに、台風が頻繁にやって来るので農作物が育ちにくい環境でした。
ですが、かるかんの原料となる自然薯は比較的多く自生していたことと、奄美地域や琉球(沖縄)から砂糖が手に入りやすかったので、作りやすかったようです。

ただし、当時は砂糖が非常に貴重だったため、主に大名家が冠婚葬祭の席で食べる「殿様菓子」でした。
庶民が食べられるようになったのは明治時代以降で、現在でも冠婚葬祭の時の贈答菓子やお土産になっていることが多いですね。
鹿児島のソウルフードのようなお菓子ですので、県内にもかるかんを製造販売しているお店がいくつもあります。
それを食べ比べてみるのも面白いでしょう。

鹿児島では、酒を飲み酔っぱらって管を巻きだした人のことを「また、あん人は『ヤマイモを掘い始めたが~』」とか言います。
ヤマイモは地下深く1m以上あるので、それを傷つけないようにするには、チマチマ根気よく掘らなければならず、それが酒飲みが同じことを繰り返して他人に絡む様子と似ているところから、そう言われるようになったようです。
酔っぱらって他人に絡むのはあんまり良いことではありませんが、ヤマイモ堀り自体は、とても根気のいるデリケートな作業だということですね。

かるかんの製造工程

自然薯-砂糖

かるかんの作り方を簡単に説明すると、皮を剥きアク抜きした自然薯と酢と水をすり鉢に入れ、すりおろします。
そこに2~3回に分けて砂糖を入れ、しっかり擦り混ぜます。粘りが少し弱くなりツヤが出るようになったら水を数回にわけて入れ、分離しないようにしっかり混ぜていきます。
そのあと泡立て器のようなもので空気を含ませるように混ぜ、かるかん粉を少しずつダマにならないように入れて混ぜます。
それを20分ほど蒸すと、弾力のある半スポンジ様の綺麗な白いかるかんが出来上がります。
かるかん粉というのは、うるち米を水洗いしてひびを作り、粗く挽いた粉で、ご自宅で作る場合は上新粉で代用してもよいようです。

かるかんは漢字で書くと「軽羹」。蒸し上がった形が羊羹に似ていますが、蒸す前より軽くなり、また羊羹より軽いということで「かるかん」と言われるようになったという説が有力です。

かるかん饅頭も人気

かるかん-饅頭

かるかんは、もっちりとした白い生地のことをいい、それだけでも香り高い素朴な甘さを味わえますが、生地の中にこしあんを入れて食べやすい大きさに作った「かるかん饅頭」も人気ですね。

かるかん饅頭のカロリーと栄養

かるかん饅頭は1個で大体50gほどで、110kalほどだそうです。
原料である自然薯(ヤマノイモ)には、良質のでんぷん質に加え、アミラーゼなどの酵素がたくさん含まれていて、食べたものを速やかに消化吸収する作用があるそうです。
また、ビタミン類や鉄分・カルシウム・リンなどのミネラルやも含まれていて、新陳代謝を促進する作用もあり、精のつく滋養強壮食として疲労回復などに効果があるといわれます。

食べるときに注意すること

美味しいうえに滋養強壮にもなるというお菓子で、2個ぐらいペロッと食べられそうですが、おやつとして食べるにはカロリーが高いので、食べ過ぎには注意しましょう。
それから、原料が自然薯(ヤマノイモ)ですので、人に贈ったりする場合は、相手がアレルギーを持っていないかを確認してからの方がよさそうです。
私事ですが、お土産に会社に持っていったら同僚にアレルギーの人がいて、嫌われそうになったことがあります(汗)。

自然薯(天然の山芋)にこだわる理由

自然薯-2

自然薯に似ている芋で「長芋」がありますが、厳密にいうと別の種類になります。

鹿児島の和菓子・かるかんは、天然の山芋である自然薯にこだわってきました。その理由は、芋の粘りの強さや食感・風味が関係していると思われます。
しかし、昔は良質な自然薯がよく育った鹿児島ですが、現在入手するのがかなり難しくなってきているそうです。
ひとつは自然薯は根気よく掘らなければならないため体力が必要なのに、堀り職人が高齢化してきていること。
そして、自然では食用になる大きさまで成長する間に、野生の猪などに食べられてしまうことが多いそうです。
栽培技術も確立していますが、天然の自然薯と同じくらいの粘りのある芋に育てるのは手間がかかりとても大変なのだそうです。

かるかんは薩摩を代表するお菓子の一つとして、昔から愛され食べられてきました。
自然薯の入手に苦慮しながらも、菓子職人の方々の工夫や技術によって、今日も美味しいかるかんは作られています。
今では菓子職人さんのアイデアなどで、桜のピンクや茶葉を入れた緑色、餡も小豆だけでなくサツマイモや金柑を使ったものなどもあり、美味しいだけでなく目にも楽しいかるかんも増えてきていますね。

山芋が入っちょっで、

もっちりふわふわじゃ~♪

疲れた体にも優しかよ

山芋の種類とその特徴の違いは、こちらにまとめてあります。

参考資料:
農林水産省 鹿児島県かるかん
Wikipedia 軽羹
自然薯とは
macaroni かるかん

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