温暖な気候と豊富な清らかな地下水でスクスク育つ、かごしまの養殖鰻

鰻重-肝付 水産物

大河ドラマ「西郷どん」でも、川で鰻を捕獲して食べるシーンがよく出てきたように、鹿児島でも鰻は、昔から大切な栄養源でした。
特に暑い日が続く夏には「土用の丑の日、鰻の日」と言われ、夏バテ防止に食べるなど、大好物な人も多いことでしょう。
現在、鹿児島県はその養殖鰻の生産量が日本一です。
いつから養殖が始まり、そしてどのような取り組みをしてきたのでしょうか?
世界で獲れる鰻の約7割を消費しているとされる日本。まずは、鰻と日本人の歴史の話から。

日本人と鰻の付き合い

うなぎ-白焼き

日本人と鰻との付き合いは長く、縄文時代の遺跡から食用されたらしい鰻の骨が出土されているそうです。

本格的に食用として定着したのは、徳川家康が江戸の町を造る際に、干拓によってできた湿地に鰻が住み着くようになってからのようです。
その頃はウジャウジャいたらしく、値段も安く蕎麦と変わらないぐらいで、男性の労働者が多かった江戸の町の貴重なタンパク源になっていたそうです。
現在では羨ましい限りですが、その頃のはぶつ切りして串に刺して焼いただけだったようなので、あまり美味しくはなかったと思われます。
鰻が高級食材になったのは、醤油が開発されタレを付けて食べるようになった享保の頃(1716~1736年)。
タレを付けて焼いた鰻が冷めないように温かいご飯で挟んでみると、これが美味しくて瞬く間に人気になり、上方まで伝わったのだそうです。

鰻の生態

鰻は体型が蛇のように細長く、海にいたり川にいたりしていて生態がよく分からない魚ですが淡水魚です。
世界中には19種類確認されていますが、食用になるのはニホンウナギ・オオウナギ・ヨーロッパウナギ・アメリカウナギの4種類。
日本で食べられている鰻はほとんどがニホンウナギですが、輸入もののなかにはヨーロッパウナギもあるようです。

淡水魚ですが、川ではなく海で産卵します。
ニホンウナギは、近年の研究で産卵場は太平洋の西マリアナ海嶺付近と特定されています。ここで卵からかえった仔魚が、少しずつ成長しながら北赤道海流・黒潮を経て、約3000kmの旅をして東アジアまでやってくるのだそうです。
鰻には鰻なりに何か事情があるのでしょうが、大変な旅ですね~。
日本にたどり着いたシラスウナギは、鹿児島をはじめ、宮崎・高知・愛知・静岡などの川を遡ります。そこで5年~10年過ごし、また秋から冬に川を下り産卵のために海へと出て行くそうです。

かごしまの養鰻

さて、1960年代から始まった鹿児島県の「鰻の養殖」の歴史ですが、あれよあれよと言っている間に、養殖鰻の生産量が日本全体の約4割になり、日本一になっています。

養鰻場は、大隅半島の大崎町、志布志市、薩摩半島の薩摩川内地区をはじめ、出水地区、指宿地区、霧島地区、種子島などに50件ほど。
大河ドラマ「西郷どん」でも川で鰻を獲るシーンがよく出てきましたが、鹿児島県はもともと鰻にとって住みやすい環境であるようです。
まず温暖な気候に加え、シラス台地で濾過された清らかでミネラル類を含む、殺菌力のある弱酸性の地下水が豊富に湧いてくるという、鰻の養殖に最適な好条件があります。

養鰻場の池の多くが、頻繁に来る台風に備え、頑丈な支柱の屋根付きのビニールハウスの中です。
そこでしっかり管理しながら、たとえばIT技術を導入し、一年を通して清らかな水を、鰻にとって最適な30℃に保ち、水流に逆らって泳ぐ習性があるので、スクリューを回して酸素を供給しながら水流を作るような工夫をしたりしながら、ストレスのない自然生育に近い環境で育てるようにしているそうです。
当然餌にも気を遣っていて、養鰻場独自のこだわりのある栄養価の高い安全なものを与えています。
そして一番大切にしていることは、日々、鰻の様子を細かく見守り、健康状態をチェックしていることだそうです。
そうやって愛情いっぱいに約9ヶ月から1年半かけて大事に育て、数日間臭みを取るために餌を断ち地下水で体内を洗浄し、活きたまま加工場やウナギ料理店に出荷されていきます。

加工場でも「食の安全・安心・おいしさ」を追及するをモットーに、ホコリ一つ入らないように衛生管理を徹底しています。
さばきの工程では、関東方面は背開き、関西は頭付きの腹開きにします。
それにタレを付け、深い味わいになるようにじっくりじっくり焼いていきます。
美味しい蒲焼きになった鰻の粗熱が取れたら急速冷凍。個別のパックに入れ仕上げのタレを注入し真空パックしているので、最高の状態で消費者にお届けすることができるそうです。

天然ものも重宝されていますが、養殖ものの良いところはしっかり品質管理が出来ること。そして一年中、安定的に生産でき、美味しい鰻がいつでも好きな時に食べられることですね。

シラスウナギの激減に対する対応

このように、安心安全な品質の良いものを生産する養鰻体制は出来ているのですが、肝心なシラスウナギが激減してきています。

鹿児島県は、2011年にシラスウナギの漁獲量が激減したことに危機を感じ、養鰻団体やシラスウナギ採捕団体、生協などの消費者団体とともに、全国に先駆けて「鹿児島県ウナギ資源増殖対策協議会」を立ち上げました。
活動の内容としては、生協などは鰻の売り上げの一部を寄付し、それを元に大学の研究者と共同して鰻の生息環境改善のための調査や研究をし、資源保護・増殖に取り組んでいるそうです。
鰻の資源確保のために、鹿児島県内の河川や沼などの内水面や海面で、全長21cm以下及び、全長21cm以上でも産卵のために海に向かう10月~12月は採捕できない決まりも作りました。
しかし、2014年に、ニホンウナギは近い将来、野生での絶滅の危険性の高い生物(絶滅危惧1B類)として、とうとう国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに掲載されてしまいました。
これによりシラスウナギを漁獲し養殖に利用する日本・中国・韓国・台湾間で協議が行われ、池入れ量(養殖池に入れることのできるシラスウナギの量)の制限など、鰻の保存や管理に関する共同声明が出されました。
これを受け、翌年にウナギ養殖業は内水面漁業振興法に基づく許可制となり、農林水産大臣の許可なしでは営めなくなったそうです。

昔から、とくに日本人にとって馴染みの深い鰻。食べられなくなると悲しいというか悔しいので、なんとか守って欲しいと思っていたら・・・。
その問題解決のために、2014年から鹿児島市にある新日本科学で行っていた研究がようやく身を結び、卵から鰻まで人の手で育てる完全養殖に成功したそうです。
これからはその増産に力を入れる段階に入るそうで、コストや色々な問題は山ほどありますが、一歩ずつ大量生産に向けて研究を続けていくらしく、これは嬉しいニュースですね!

鹿児島県のブランド化に向けて

2014年には、ウナギ養殖に必要なシラスウナギ資源を安定的に確保することを目的とした、県内の養鰻業者で「県養鰻管理協議会」も設立されています。
ここでは出荷証明書を発行していて、店頭に掲示してもらったり、蒲焼きなどの商品にオンパックシールを貼って出荷するなどの取り組みを行っています。
これは、適正に品質管理されたところで生産され出荷されたという証明になり、安心安全な鹿児島県産の鰻としてのブランド化に役立っています。

鹿児島鰻-オンパックシール
オンパックシール (鹿児島県養鰻管理協議会ホームページより)

川魚特有の臭みもなく、身がふっくらとした美味しい鹿児島県産の鰻。鹿児島に旅行に行った際はもちろん、お取り寄せもできるので、ぜひ鹿児島のこだわりの鰻を食べてみてください。

うなぎ -定食-松重

鰻どんは黒くて細長くて、

おいとは正反対じゃ!

じゃっ!よね~

鰻の栄養と効能については、下記に詳しくまとめてあります。

参考資料:
鹿児島県養鰻管理協議会
たび こふれ 大崎町こだわりのウナギ
岐阜鰻 たむろ
うなぎの松重

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