冬から初夏にかけて出回る、新ジャガが美味しい鹿児島のジャガイモ

フライドポテト 名産品

「日本でジャガイモの産地といえば?」と尋ねられると、ほとんどの人が「北海道!」と答えますよね。
それは当然で、北海道のジャガイモの生産量は、全体の約8割を誇っています。
「では2位は?」と尋ねられると「??」となる人が大半だと思いますが、意外なことに鹿児島県or長崎県なのです。
その年の天候によって入れ替わることはありますが、鹿児島県はここ十数年2~3位をキープしています。

作付面積があまり広くないのになぜ?

鹿児島-ジャガイモ畑
鹿児島のジャガイモ畑

全国の作付面積の約7割を占める北海道が1位なのは納得の話ですが、それより作付面積が全然少ないのにそれに続いているのは、北海道が1期作なのに対し、鹿児島県や長崎県は暖かい気候を利用して1~3期作が出来るからなのだそうです。

8月に植え付けたものが11月、9月中旬~11月のものが1~4月、11月中旬からのものが4~5月に収穫が可能です。
もっとも、台風常襲地帯でもあるので、8~9月を避けた作型をとっているところもあるようです。

鹿児島のジャガイモは「新ジャガ」が美味しい

ひと昔前と比べると保存技術も上がってきているとはいえ、暖かい気候の九州ではジャガイモの長期貯蔵が難しいということもあり、鹿児島では穫れたてジャガイモに力を入れています。
北海道のジャガイモの収穫が始まるのは7月下旬からなので、青果店やスーパーなどで1~5月頃に見かける「新ジャガイモ」は、じつは鹿児島県や長崎県などで生産されたジャガイモ!

とくに離島が多く南北600キロメートルもある鹿児島県は、1月から5月頃まで、収穫したての「新ジャガイモ」の供給が可能です。
1月から長島産の「早春ばれいしょ」を皮切りに、奄美地区の沖永良部島・徳之島、種子島・屋久島、そして本土のなんぐう地区(南大隅町)・根占・串木野、再び長島と、リレー形式で5月まで出荷が続いていきます。

品種は「ニシユタカ」が多い

赤土ジャガイモ-ニシユタカ
ニシユタカ

沖永良部島では、ホッカイコガネ(ゴールド)・メークインが主体のようですが、鹿児島県で一番多く栽培されているのは「ニシユタカ」という品種。
これは温暖な地域での栽培に適するように、長崎県総合農林試験場において育成された品種で(暖かい地域での栽培に適した「デジマ」と、大きめで収量が多い「長系65号」を交配)、西南地方でよく育ち、成長が早く収穫量も多いことから「ニシユタカ」と命名されたそうです。
平らな楕円形で黄色い果皮は薄くなめらかで、芽が浅いのでとても剥きやすいですし、皮もえぐみがないので剥かなくてもそのまま食べられます。
皮にはポリフェノールや食物繊維が含まれているので、皮ごと食べると栄養面でもオトクですね。

旨みがあり、ねっとりとした食感ですが、水分量が多くみずみずしいので、しっとりとした味わい。
薄黄色の果肉は加熱しても煮崩れしにくいので、肉じゃがなどの煮込み料理やフライドポテトにぴったりです。

よく名前を耳にする「赤土ジャガイモ」とは

大小の島々からなる長島や奄美地区の栽培地は、温暖な海に囲まれていて、潮風が運ぶミネラルが豊富に吸収された赤土です。
その赤土で育つジャガイモは、「ニシユタカ」の特徴を保ちながら、鉄分や亜鉛、カリウム・カルシウムなどの栄養もたっぷり含んでいます。

保存の注意点

風通しのよい冷暗所で、新聞紙などで包むか被せるかして保存し、1ヶ月をメドに食べてください。
冷暗所で保存するのは、ジャガイモは太陽光や蛍光灯の光でも、当たると緑色に変化したり、気温が高くなると芽が出やすくなるからです(新聞紙などで包むか被せるのも、光を当てないようにするため)。

緑化した部分や芽にはソラニンという有害物質が含まれています。緑色になった場合はその部分を厚めにむき、芽は包丁の根元でえぐり取ってから調理してください。

ジャガイモを保存する時、一緒にリンゴも入れておくのも良い方法です。
リンゴが放出するエチレンガスがジャガイモの成長を抑制するように働き、発芽しにくい状態を作ってくれるそうです。

気象災害や病害防止対策

鹿児島県は台風常襲地帯であり、冬には強い季節風の影響で霜害や病害が発生するなど、気象災害を受けやすい地域です。
その対策として「防風ネット」を設置したり、米ぬかやフスマなどの有機物の投入を行い土着菌を増加させ、ジャガイモの病害である「そうか病」の防止につとめています。

また、全ての畑ではありませんが、畝だけでなく全面にマルチを敷いているところもあります。
マルチとは、藁やビニールシート・ポリエチレンフィルムで覆うことです。それにより1. 地温の調節ができる 2. 土の乾燥を防ぐ 3. 雑草が生えにくくする 4. 雨などで肥料が流れ出ることを防ぐ 5. 病気の伝染を防ぐ などのメリットがあります。
マルチを敷くことも、収穫する際も手間がかかりますが、鹿児島県北西部に位置する長島で1月から収穫できるのも、周りを暖流の東シナ海に囲まれているからだけでなく、土の温度を下がりにくくするマルチのおかげもあるそうです。

ジャガイモ-素揚げ

新品種「しまあかり」「しまクイーン」の育成

鹿児島ではまだ侵入は確認されていないそうですが、全国に被害が拡大しているジャガイモ害虫・ジャガイモシストセンチュウ対策。
北海道育成種は鹿児島県では生産性が低いため、本県に適した新品種の育成が急務でした。
研究の結果、鹿児島県農業開発総合センターにて「しまあかり」が選抜・育種されました。
これは「ニシユタカ」と同じ丸系種で収量も同程度。そして、ジャガイモシストセンチュウ害虫病への抵抗性を持っているので、万が一の時「ニシユタカ」「デジマ」からの切り替えが可能。

同じく県で育成された長系の「しまクイーン」も現在、現地適応性の実証を行なっているそうで、将来的にも安定した出荷ができるよう、取り組みが進んでいるようです。

販売網を広げるための取り組み

購買される方に安心してもらえるよう、ジャガイモの出荷箱には、生産者番号や圃場番号を印字するなどのトレーサビリティにも対応できる体制が取られていて、何か問題が起きた場合でも迅速な対応ができるような管理体制が整えられています。

ここ10年、鹿児島県の生産量は4%ほど増加しているそうで、ますます認知度を上げるために「かごしまブランド」の確立運動として、長島地区(赤土じゃがいも)・なんぐう地区〈南大隅町〉(じゃがた)・徳之島(春一番)・沖永良部(春のささやき)などが「かごしまブランドのばれいしょ」に指定されています。

冬から初夏にかけての鹿児島の「新ジャガイモ」をぜひ!

温暖な気候のため、長期貯蔵ができないことを逆手にとって生産される鹿児島の「新ジャガイモ」。
上記の説明のとおり、収穫してみずみずしいうちに美味しく食べられるように生産されたジャガイモです。

煮物にしても煮崩れしにくいですが、オススメの食べ方は、皮ごと細長く切り(小さいものはそのままでも)油で揚げ、仕上げにパッパッと塩をふるだけのフライドポテト。ジャガイモ本来の美味しさが存分に味わえる出来だそうです。

かごいまのジャガイモを

揚げたフライドポテト。

しょけに最高じゃ!

皮も美味しかね~

ジャガイモの栄養価や保存方法など、下記にもまとめてあります。よかったら一緒にお読みください。

参考資料:
JA鹿児島県経済連 新ばれいしょ
島の風土研究 沖永良部
みんなの農業広場 長島の赤土じゃがいも
徳之島地域赤土新ばれいしょ「春一番」 145041.pdf
鹿児島県におけるばれいしょ生産の概要 j07-11.pdf

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