芸術的に美しい霜降り、肉質もきめ細かくやわらかい、鹿児島黒牛

黒毛和牛-ステーキ 名産品

温暖な気候、ミネラルたっぷりな清らかな渓流水、恵まれた大自然の中で、ストレスを感じることなく丁寧に育てられた鹿児島黒牛。
見た目も芸術的に美しい霜降りの、肉質もきめ細かくやわらかで、口の中でとろけるようなその味の美味しさは、食べた人の期待を裏切りませんね。

日本においては、仏教伝来から有用家畜であった牛や馬などの肉食はタブーとされたきたので、本格的な肉食文化は明治時代後期以降になります。
鹿児島県は、明治時代にいち早く「畜産試験場」を設置し、在来種である羽島牛・加世田牛・種子島牛に鳥取県・兵庫県産などの和牛をかけ合わせ、改良に改良を重ねて生まれたのが、現在の「鹿児島黒牛」になるのだそうです。

鹿児島黒牛、和牛の頂きへ

全国和牛能力共進会-ポスター
鹿児島県ホームページより

日本では、和牛の質を高めるのを目的に、5年に一度「全国和牛能力共進会」という和牛の品評会を開催しています。

2022年、地元鹿児島県で開催された「第12回全国和牛能力共進会」において、鹿児島黒牛は、全9部門のうち4部門で1位(農林水産大臣賞)を受賞し、また「種牛の部」の「第4区(繁殖雌牛群)」では、内閣総理大臣賞、「肉牛の部」では、最優秀枝肉賞を受賞し、5年前の宮城大会に続き、実質「和牛日本一」の栄冠に輝きました。

これは、生産者や全国登録協会、JAグループ、市町村関係者が「チーム鹿児島」として一致団結し努力してきた結果の勝利でした。

和牛と国産牛の違い

ここで話は少しそれますが、お肉やさんやスーパーで売られているものに「和牛」「国産牛」「輸入肉」がありますね。輸入肉はその名のとおりですが「和牛」と「国産牛」の違いってご存知でしょうか?
「国産牛」は大きく3つに分かれ、「和牛」はその中のひとつです。

和牛

日本で肉の生産を目的に改良された牛のことで「黒毛和牛」「褐毛和牛」「日本短角種」「無角和種」の4種類になります。
この4種類の中で「黒毛和牛」が最も良い肉質を生産するということで、日本で育てられている和牛の約95%がこの品種になり、鹿児島黒牛もこの黒毛和牛になります。

乳用牛

牛乳の生産を目的とした、主にホルスタインやジャージー種などの牡や、乳を出し終わった雌などのこと。

交雑牛

乳用種の雌×黒毛和種の牡の交配牛。
国産牛ですが、外国種の輸入牛も3ヶ月以上国内で飼育されていたり、屠殺場所が国内であれば、国産牛になるそうです。
※乳用牛・交雑牛または輸入牛は、和牛より格下に位置づけられるため、「和牛」を「国産牛」として販売することはまずありませんが、外国種の黒毛の牛を「黒毛牛」などと紛らわしい名前で売ることはあるようなので、注意した方がよいそうです。

鹿児島黒牛の歴史

鹿児島黒毛和牛-肉
©鹿児島市

では、鹿児島黒牛の話に戻ります。

昔から鹿児島県でも牛は飼われていましたが、それは役用牛という農耕を手伝うための牛で、食用にするには肉量の少ない小さな牛でした。

鹿児島県は明治時代に「畜産試験場」を設置し、改良を重ねてきましたが、本格的に取り組み始めたのは1950年代の後半。
まず体格改良に、大型で発育成績が優れている鳥取や岡山・広島などに種雄牛を求めました。
1960年代、発育や体型、遺伝力に優れた西伯郡の牛を導入したりして体型を改良していき、立派な体型が固定できるようになりました。
しかし、体型面の改良がようやく一段落したのも束の間、1970年代後半には肉用牛の改良面で再び転機が訪れます。
サシ(脂肪交雑)が入った高級肉の需要が増え、またアメリカからの牛肉の市場開放圧力も強まっていたので、今度は肉質面を重視した改良に取り組まざるをえなくなります。
そこで種雄牛として肉質の優れている但馬牛を導入し、改良の日々が続きました。
そして、1992年に開催された第6回全国和牛能力共進会において、初めて父牛・母牛ともに鹿児島生まれである牛で、11部門全部で優等賞を獲得するところまでたどり着きます。
本格的な改良に取り組み始めてから30年かけて、ようやく鹿児島は自分の足で立てるようになったのです。
体型も肉質も良い、しかも遺伝力が強い鹿児島県産の和牛は、1992年から「鹿児島黒牛」と呼ばれるようになり「かごしまブランド」に指定されました。

第6回全国和牛能力共進会の後、次に取り組んだのがサシに象徴される枝肉の向上です。肉質が良くなってきたとはいえ、牛によって肉質にバラ付きがあり、全体としては但馬や岐阜・島根の牛などと比べると評価が低かったからです。
鹿児島県では他の県に先駆けてデータ分析に取り組み始めました。
肉質や量は雄牛の遺伝などで決まるので、生まれた子牛の肉質や量を数値化し、その種牛の能力を調べるためです。
優れた遺伝子を鹿児島県内の和牛生産農家に分配するために必要なデータで、全体の枝肉の向上に役立っています。

繁殖から出荷までの工程

一般的な繁殖から出荷までの工程ですが
繁殖農家で生まれた子牛は、2~3ヶ月母牛と一緒に、母の乳を飲みながら過ごします。
離乳後は、せり市に出る生後8~9ヶ月までは、繁殖農家で飼育され成長します。
県内15カ所ある家畜市場で開催される子牛せり市での取引で、多くの子牛が繁殖農家から肥育農家に移ります。
ここで県外の肥育農家に移る子牛も多いので、購入した牛肉が鹿児島県産ではなくても、生まれたのは鹿児島県という牛肉を、知らないうちに食べているということもありますね。

肥育農家で約20ヶ月かけて600kg~800kgまで成長させ、出荷されるのだそうです。
農家さんによって、環境や飼育方法、与えられるエサに少し違いはありますが、JAグループに登録している農家さんでは、基本的にJAが管理している飼料が与えられているそうです。
各地域には指導員がいて、飼育の指導や農家さん達を集めた定期的な勉強会も行われています。

黒毛和牛-すき焼き

分業化とハイテク化

上記したように、繁殖農家では出産管理・子牛の世話・粗飼料の生産までこなさなくてはいけません。
しかし2000年代になると、高齢化した小規模繁殖農家の負担が大きいため、離農が止まらず母牛頭が減り始めていました。
子牛の生産が減ってしまっては「和牛王国・鹿児島」は衰退してしまいます。

そこで、2011年にJAと県経済連が連携して、鹿屋市串良に混合飼料(TMR)センターを設立しました。
このセンターで、まとめて安定した良質な牛の飼料を作ることで、個々の繁殖農家の負担が減りました。
生産した飼料は地域の牧場にも供給する仕組みになっているため、繁殖農家だけでなく肥育農家も飼料調達の負担軽減になり、牛を育てることに集中することができるようになりました。
センターでは、後継者の育成と併せて繁殖経営の仕事を「飼料の生産」「母牛の管理」「子牛の管理」の3つに分業して行なっているため、より多くの生産管理を可能にしています。
また、ICT(情報通信技術)機器の導入することで、牛の発情や体調なども管理できるようになり、子牛の出荷もどんどん増えているそうです。

肥育農家(畜産会社)でもDX(デジタル変革)が進められています。
牛の各部屋に4Kカメラを設置し鮮明な映像で牛を監視。そのデータを、ローカル5Gを使って瞬時に収集してAIが分析し、牛にトラブルが生じるとすぐに察知し通報するシステムも徐々に導入されています。
鹿児島大学の研究室では、牛舎をパトロールする車型のロボットも開発中だそうです。

安心・安全な鹿児島黒牛を届けるために、生産履歴がわかるシステム作り

2003年に制定された牛トレーサビリティ法に基づき、国内で生産・飼育される牛全頭に10桁の耳標が装着されるようになりました。
この10桁の番号は個体識別番号で、牛1頭ごとに違う番号が付けられているそうです。
鹿児島黒牛については、JA鹿児島県経済連のホームページで「どこで生まれて、どこの誰が育てたのか」を確認できるようになっているそうです。なんだか安心できるシステムですね。

ストレスを与えないように大切に育てられる鹿児島黒牛

鹿児島黒牛-放牧

ストレスのない牛は良い肉質になるといわれますが、とくに黒毛和牛を食べると、肉質のきめが細かく脂肪の融点も低いため、とろけるような口当たりと旨みで、なんともいえない幸せを感じますね。
これはオレイン酸が多い証拠で、不飽和脂肪酸のオレイン酸は融点が低いので、口の中に入れた瞬間に溶けるからです。
そしてなにより、肉に含まれるたくさんのトリプトファンが脳に取り込まれ、しあわせホルモンのセロトニンが作られるからだそうです。
サシ(脂肪交雑)が多いと、脂肪が多いじゃないか?と心配される人もおられるかもしれませんが、オレイン酸はオリーブオイルと同じ脂肪酸。体にも良い影響を与える脂肪です。
まあ、食べすぎると太りますが‥‥。

全国和牛能力共進会において、実質「和牛日本一」の栄冠に輝いた質の良い鹿児島黒牛ですが、じつは鹿児島県の和牛生産頭数も、日本全体の2割ほどと、日本一を誇っています。

全国にも食べられる飲食店や、取り扱っている精肉店やスーパーもありますが、通販でも購入でき、ふるさと納税の返礼品にもなっています。
国内はもとより、アメリカや香港、EU(ヨーロッパ連合)などでも絶賛されている鹿児島黒牛を、ぜひご堪能ください。

鹿児島-焼肉

オイも立派な黒牛になれるよう、

体を鍛えんとねー!

うんにゃ、

おまんさあは牛じゃなくて、

白い大根‥‥

牛肉の特徴や栄養と効能は、下記にまとめてあります。

参考資料:
鹿児島県 鹿児島黒毛和牛
accompany
JA食肉かごしまのお肉屋さん
地理的表示産品情報発信サイト
躍進する鹿児島黒牛
南日本新聞373news.com 鹿児島が「和牛王国」であり続けるには?
上記ポスター 鹿児島県ホームページ

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