繊細で小さい魚・キビナゴ。帯状の青銀色の模様が美しい

キビナゴ-刺身-3 水産物

キビナゴは鮮度が落ちるのが非常に早いため、漁獲地以外で流通することはまずありませんでした。
しかし鹿児島県の近海では、昔から年間を通じてジャンジャン水揚げされていたので、様々な料理レシピで食べられてきた、鹿児島の郷土料理に欠かせない小さい魚です。

キビナゴという魚とは

キビナゴ-海の中

キビナゴはニシン目ニシン科ウルメイワシ亜科キビナゴ属に分類される、体長10cmほどの細長くて小さな青魚。
房総半島より西南に幅広く、小さな群れを作って棲息しています。
臆病できれいな海水の中でしか生きていけず、水から1秒でも離れると死んでしまうほどデリケートで、何度か養殖も試みられたようですが、あまり上手くできていないようです。
鮮度が落ちるのがとにかく早い魚で、漁獲と同時にすぐ氷水に浸けて保存しますが、漁獲地以外では生で流通することはほとんどありません。

ですが、東シナ海、錦江湾、太平洋と漁場に恵まれた鹿児島県では漁獲量が多く、特に鹿児島本土の西に位置する甑島(こしきしま)は、全国の水揚げ量の20%以上を占めています。
そんな訳で、漁獲量が多い鹿児島では生魚店やスーパーなどで普通に売られていて、刺身の他にも様々な料理で食べられている、とても馴染みのある魚なのです。

鹿児島の郷土料理に欠かせない魚

名前の由来は、体にある帯状の青銀色の模様からきている説があります。
鹿児島南方の方言で帯を黍(きび)と言い、黍を付けた小魚(なご)ということで、キビナゴと呼ばれるようになったとか。
海の中を泳ぐキビナゴの群れは、帯に見える体の青いラインがキラキラと光って見えることから、鹿児島では「海のしずく」という愛称でも呼ばれています。

新鮮な生を刺身でも食べられる鹿児島では、郷土料理に欠かせない魚のひとつです。頭や骨・内臓を取った身を半分に折り、「菊花作り」という菊の花のように盛りつけられたりする、半透明の身と銀色の帯の美しい刺身です。
味はイワシの仲間ですが青魚独特のクセはなく淡白で上品、プリップリの食感です。
少し弾力のあるキビナゴの身でミョウガやおろししょうがなどの薬味を包み、酢味噌に絡ませて食べるのが鹿児島流。
また、キビナゴは小さく頭も骨も柔らかく、1尾丸ごと食べることが出来るので、刺身以外にも塩焼きや天ぷら・南蛮漬けなどさまざまな料理で親しまれています。

キビナゴは獲れる時期により少し違う味わいに

キビナゴ-塩焼き

鹿児島県が選定する「かごしま旬のさかな」では夏に選ばれていますが、年間を通して水揚げされている魚で、獲れる時期により少し違う味わいが楽しめます。

11~12月頃の寒が入る時期は、小さいですが身が引き締まっているので、すっきりとした味に。
1~2月頃のは、寒さを乗り切るためと産卵に向け餌を多く食べ脂を蓄えているので、ふっくらとして味が少し濃厚になります。
5~6月は産卵期になるため、卵や白子を抱えて「子持ちキビナゴ」になっているものも水揚げされます。身は少し痩せていますが、子持ちししゃもなどと同様に、卵や白子も味わえますので、丸ごと煮たり塩焼きや唐揚げなどが好まれます。
※海洋資源として守るために「漁師の約束」として、漁獲禁止区域も設けられています。

小さいけれど、栄養豊富

キビナゴにはタンパク質や脂肪酸、ビタミンB群・ビタミンD、カルシウム・マグネシウムなどのミネラル類などが含まれています。
脂肪酸もありますが、青魚なので不飽和脂肪酸のEPA・DHAが豊富です。
キビナゴは頭も骨をも柔らかいので、丸ごと食べられるのが栄養的にも嬉しい魚。丸ごと食べると、他にも微量に含まれている栄養素も逃さず摂取できます。

キビナゴの特徴や栄養と効能は、下記にまとめてあります。

鹿児島県では、全国への流通にも力を入れています

キビナゴ-オイル漬け

鮮度落ちが早いので、水揚げされてからすぐに加工されることも多いキビナゴ。
丸干しや天日干し、甘辛煮やせんべい、さつま揚げ、オイル浸けなどさまざまな商品になっています。
和食だけでなく、オイル漬けなどはアンチョビのように、パスタに絡めたりピザのトッピングなどといった洋食の料理にも使えます。
真空パックや瓶詰めで売られている商品もありますので、あまり鮮度を気にせずストックしておけば、食べたい時にいつでも食べられて便利です。

また近年、全国にある薩摩料理などの店で、キビナゴの刺身が提供されるところが増えてきていますね。
管理人は、輸送速度が早くなったからだと思っていましたが、特殊な急速冷凍装置が開発されたおかげのようです。

朝に獲れるとすぐ氷水に漬けで保存しますが、午後になると味が落ちてしまうと言われるほど鮮度落ちの早いキビナゴ。
どんなに急いで、たとえば空輸で運んでも間に合わず、漁獲地以外では夜に刺身で提供するのは、今まではとても難しかったのだそうです。
それを可能にしたのが、新しく開発された特殊な急速冷凍装置。
水揚げされるとすぐ加工工場に運び、頭や骨・内臓などを取る下処理を施し、1時間以内にはこの冷凍装置で-25℃以下で凍結します。
これは薩摩料理などの店に出荷しているだけでなく、通販などでも販売していますので、全国どこのご家庭でも購入できます。

美味しいだけでなく、EPA・DHAなどを含み栄養豊富なキビナゴという魚を、全国各地の人々にも味わってもらえるというのは、ほんとに嬉しい時代になったものです。

キビナゴ

もぜか(可愛い)魚じゃっ!

おまんさあも、もぜかよ♡

参考資料:
農林水産省 うちの郷土料理 きびなご
JF鹿児島漁連 キビナゴ
甑島漁業協同組合 日本一のきびなご
津曲商店 冷凍キビナゴ

タイトルとURLをコピーしました