芋焼酎だけじゃない! 鹿児島で造られているさまざまな酒類紹介

いろいろなお酒-乾杯 製造物

鹿児島の「酒」というと芋焼酎が有名ですが、他にも黒糖焼酎・麦焼酎・米焼酎・蕎麦焼酎・灰持酒・ウィスキー・日本酒、そしてビールも造っています。
ここでは、鹿児島県で造られている芋焼酎以外のお酒について紹介します。まずは黒糖焼酎から。

黒糖焼酎

黒糖焼酎-鶏飯

黒糖焼酎は、鹿児島県の奄美群島のみで製造が認められている焼酎です。

もともと奄美群島では泡盛が盛んに製造されていました。しかし第二次世界大戦が起こり、深刻な米不足に陥り米が原料の泡盛の製造が難しくなってしまいました。そこで考えて、米の代わりに主要な作物であったサトウキビを原料として黒糖酒の製造を行っていました。
ところが1953年に日本に返還されると、今度は酒税法という壁にぶつかります。
何しろ原料が黒糖なので、麹を使わずに酒を造っていたからです。麹は芋や米などの原料を糖に変えるために必要なのですが、もともと黒糖は糖なので、麹が必要なかったのです。
そのため黒糖酒は、焼酎より税率の高い、ラム酒のようなスピリッツに分類されてしまったのです。これでは負担が大きすぎると訴えた島民が多く、特例として「麹で仕込んで黒糖焼酎にする」ことを条件に、奄美群島限定での製造を許可したのだそうです。

そんなわけで黒糖を原料にしていると聞くと、甘いお酒を想像するかもしれませんが、蒸留酒なので糖質はゼロです。ついでにプリン体もゼロです。
黒糖が原料なため、独特なコクや風味があり、臭みは少なく飲みやすい焼酎です。
お求めの際は、海・太陽・奄美の島々をイメージして作られた「奄美黒糖焼酎マーク」を目印に探しましょう。

麦焼酎

麦焼酎は、明確な文献などが残っていないので絶対とはいえないそうですが、16世紀に大陸から対馬を経て壱岐に蒸留技術が伝えられ、生産が始まったとされています。
九州の味噌は麦を原料に造られる地域が多く、鹿児島も麦味噌が主ですから、この麦焼酎造りの技術も薩摩(鹿児島)まで伝わっていたと考えるのが妥当でしょう。
明治時代に酒税法で禁止されるまで、味噌や醤油と共に各家庭で造られ飲まれていたと考えられます。

麦焼酎は、芋焼酎ほどの独特な臭いやクセがないので、あまり焼酎を飲まない人でも飲みやすい仕上がりになります。

蕎麦焼酎

あまり知られていませんが、鹿児島では蕎麦も生産されており蕎麦焼酎も造っています。
磨いた蕎麦の実を100%使用し、長期貯蔵することによって、クセのない柔らかな蕎麦の風味が愉しめます。ほんのりと甘く、ロックやストレートがオススメです。

米焼酎

米焼酎は麦焼酎と同じ16世紀頃、南方の琉球(沖縄)から入ってきた泡盛を参考に造られるようになったとされています。
薩摩は米作りには難しい土地であり、使われる黄麹は気温の高い場所では管理が難しいので、清酒(日本酒)はあまり生産されてはいなかったようですが、藩の上の人々は振る舞い酒として飲んでいたでしょう。
その清酒を蒸留すると米焼酎になるので、薩摩でも飲まれていたのではないでしょうか。

清酒と同じ米を原料とする米焼酎も、芋焼酎ほどの臭みはなく、さらっと飲めるのが特徴です。

鹿児島では、麦焼酎や米焼酎・蕎麦焼酎も芋焼酎を造るいくつかの蒸留所で昔から一緒に造られており、人気銘柄になっているものもあります。

灰持酒

米を原料に清酒を造る過程のもろみに、灰汁を加えることで保存性を高めた酒が灰持酒。

18世紀に製造が始められたといわれており、発酵後半の糖化による濃厚な甘みが残り、日本酒とは別種の味醂に近い調味酒です。
日本酒は殺菌のため火入れをしますが、灰持酒は米で作った麹に水と酵母を加えて発酵させ、火入れをせず、灰を加えることで保存性を高めて造られます。
火入れをしていないので、うま味成分でもあるアミノ酸が豊富に残っています。

お正月のお屠蘇などのお祝い酒として、また郷土料理の「酒ずし」や「さつま揚げ」「とんこつ」の味付けに使われる、鹿児島の地酒。
第二次大戦後、原料となる米不足のせいで灰持酒の製造は一時途絶えていましたが、東酒造が改良を加えながら復活させました。

灰持酒-酒ずし
© K.P.V.B

ちなみに鹿児島の郷土料理「酒ずし」は、島津の殿様が開いた花見の宴会の後、残ったごちそうを保存しようとしたのか、女中が料理と灰持酒を一緒にして桶に入れていたところ、翌朝良い香りが漂ってきたので試しに食べてみたら美味しかった、というのが始まりだそうです。
「酒ずし」という名前ですが、酢は使用しておらず、灰持酒で発酵させた料理。
かなりの量の灰持酒を使っているため、お酒に弱い人の中には酒ずしを食べただけで酔うこともあるので、観光で訪れた人などは注意してくださいね。

ウイスキー

焼酎と同じ蒸留酒であるウイスキーを手掛けている蔵元もいくつかあります。
本坊酒造マルスウイスキーの、南さつま加世田「津貫」。小正醸造の日置市にある「嘉之助(かのすけ)蒸溜所」、霧島市にある黄金酒蔵「横川蒸留所」、大隅半島・大崎町の天星酒造「菱田蒸溜所」、そして薩摩酒造の「火の神蒸留所」もウイスキー造りに挑戦しています。

日本のシングルモルトウイスキーは、海外の賞を受賞するなど国際的に評価が高く、国内外で需要が高まっているのを受け、ますます増えていくのではないでしょうか。
蒸留所の見学は、観光としても面白いですしね。

日本酒

酒米の栽培に適さない土地であることや、高温な気候の鹿児島では低温管理が難しく、長らく日本酒造りは途絶えていましたが、2012年、約40年ぶりに串木野市の濱田酒造が日本酒づくりを開始しました。
これは日本酒造りを学ぶことで、焼酎のさらなる品質の向上につなげることを目的とした新たなチャレンジだったそうです。
そして、2020年には、西酒造が日本酒の製造免許を取得し、日本酒造りに着手。

昔と比べて日本酒の製造や管理の技術も飛躍的に向上しているので、以前は製造が難しいといわれていた土地でも「美味しい日本酒が造りたい!」という心意気があれば、造れる時代になってきているのですね。

もう一つ「ふるさと納税」の返礼品として、姶良郡湧水町が手がけている日本酒があります。
これは醸造だけは熊本県の酒造会社に委託していますが、日本棚田百選の一つ幸田の棚田で収穫した棚田米(ヒノヒカリ)と、名水百選の一つ丸池湧水の水、栗野天然酵母を使用した、原料が鹿児島県産のみの純米酒です。

日本酒-鹿児島

クラフトビール

鹿児島県のいろいろな場所で、クラフトビールも造られています。
サツマゴールド、霧島高原ビール、城山ブルワリー、伝兵衛ビール、桷志田ブルワリーなどがあります。

酔くろた!!

そりゃ、酒ずし食もいながら、

焼酎やらウイスキーやら

呑んじょっからよ!

参考資料:
美食道 錦江湾 薩摩焼酎の歴史
たのしいお酒.jp 焼酎
鹿児島県 ふるさと認証食品
My CRAFT BEER
九州旅ネット

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