サツマイモの新品種「みちしずく」を育成した研究所が、想像以上に大きかった

芋焼酎-イメージ 食べ物こぼれ話

2018年秋から、鹿児島県および宮崎県で、今まで発生報告のなかったサツマイモの病気・サツマイモ基腐病が発生し、急速に全国に広がり問題になっていますね。
基腐病はディアポルテ・デストルエンスという糸状菌に感染することにより、サツマイモの株が立ち枯れ塊根(イモ)が腐敗してしまう病気。収穫時には健全に見えて貯蔵中のイモでも、発病することもあるため急速に広がってしまったという、厄介な病気です。
特効薬も無いので、ここ数年、病気が発生した畑のイモは種芋に使わないとか、土壌の消毒・浄化、輪作をするなど、その対策に追われています。
鹿児島県にとって、サツマイモは重要な作物の一つ。とくに芋焼酎の主要原料で作付面積が5割を超える「コガネセンガン」の生産量が減ってしまったため、芋焼酎も減産に追い込まれていました。

「早く病気が収束したらいいな」と心配していたところ、2023年2月7日の南日本新聞から嬉しいニュースが配信されました!
サツマイモ基腐病への抵抗性が高い新しい品種のサツマイモ「みちしずく」が育成され、コガネセンガンの代替品種にならないかということで、それを原料に造った焼酎の試飲会が、普及のために開かれたのだそうです。

新品種「みずしずく」とは

コガネセンガン-サツマイモ
↑これは「コガネセンガン」

みずしずく(旧系統名:九州200号)は、「農研機構」が育成し、2022年6月に発表したサツマイモの新品種。
芋焼酎原料の主流である「コガネセンガン」によく似ており、試験醸造の結果も、アルコール量や酸度、味や香りがほぼ同じだったそうです。
しかも、コガネセンガンより基腐病に強いうえにデンプン収量も多いので、焼酎の代替だけでなく、デンプン原料用としても優れているのだとか。

試飲会に参加した杜氏や酒醸造関係者からは、焼酎・生芋・蒸し芋の状態でコガネセンガンと比較し「軟らかい」「甘みが少ない」という指摘があったものの、大方好評だったようで、24年度からの本格普及を目指しているそうです。
まあ、イモの品種が違うので、全て同じとはいかないでしょうが、「みずしずく」を使ってどういう焼酎を造るかが、これからの杜氏や酒醸造関係者の腕の見せどころではないでしょうか。
…案外、味や香りなど「みずしずく」の方を好む人も多いかもしれません。

「しかし病気が判明してから新しい品種が発表されるまで、随分早いなあ。たぶん、いろいろな状況変化に備えて、日頃からいろいろ研究して、品種改良に取り組んでいる研究所があるんだろうなあ。」とは考えていたのですが、今回はそれで名前が出たのが「農研機構」。
「え~と、農研機構って? 全然知らない」となったので、ちょっと調べてみたら、私が想像していたよりはるかに大きい研究機関で、びっくりしたついでに紹介しようと思います。

農研機構とは

農研機構は、日本の農業(畜産を含む)全般と食品産業の発展のため、基礎から応用まで、幅広い分野で研究開発を行う機関です。
起源は、明治26(1893)年に設立された「農商務省農事試験場」という歴史の長い機関。2001年に独立法人として発足し、数回の統合を経て、2016年に「国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構」、略して「農研機構」になったそうです。

この分野では、日本最大の研究機関になるそうで、正職員数・約3,300名。
本部は茨城県つくば市にありますが、全国各地に研究拠点を配置しており、国・都道府県・大学・企業等と連携して共同研究や技術移転活動、農業生産者や消費者への成果紹介も進めています。
農業・食品産業における「アグリ・フードビジネス」「スマート生産システム」「アグリバイオシステム」「ロバスト農業システム」の4つの柱を立てて、研究開発を推進し、持続的な農業の実現および地方創生、ひいてはSDGsの達成に貢献している機関だそうです。

現在、農研機構の2021~2025年の目標として、以下の3つを掲げ活動しています。

1. 食料の自給力向上と安全保障
2. 農業・食品産業の競争力強化と輸出の拡大
3. 生産性の向上と環境保全の両立

日本の食料自給率は最低

ここ数年、物価の上昇が止まりませんねぇ。
これはご存知の通り、地球温暖化による記録的な猛暑や自然災害の頻発で農作物の生産量低下、新型コロナ発生によるパンデミック、ロシアのウクライナ進攻、円安などが原因で、燃料不足・海上輸送のコンテナ不足など物流費の上昇、小麦など輸入生産物の価格が上昇しているためですね。

そしてもう一つ、大事な原因があります。

それは、日本の食料自給率が諸外国と比べて、先進国の中で最低水準だということです。
米・鶏卵・野菜の自給率はあんがい高いのですが、小麦や大豆・食用油などは、ほとんど輸入に頼っているのが現状です。
とくに小麦は、パンや菓子類、麺類・天ぷら粉など食品の原料になることが多いのに、ひと昔と比べて品質は上がってきているそうですが、まだまだ国内産は1割ほどだそうで、それが値上げラッシュに拍車をかけている感じですね。

それでなくても、「これから世界的には人口が増加する!」といわれていますので、現在日本に輸出している国でも、自国の食料が足りないという事態になると、値上げをしたり、輸出制限をしたり、止めてしまう可能性もあります。
「このままでは、日本は冗談抜きでヤバいんじゃないか…」と、素人なりになんだか不安を感じていました。

そんな時に、サツマイモの新品種「みちしずく」の話題から派生して、大きな研究機関である「農研機構」が、“食料の自給力向上と安全保障”と“農業・食品産業の競争力強化と輸出の拡大”などを目標として、日々研究を続け頑張っているということを知って、ちょっと安心したという、今回はそういう話でした。

人間が生きていくために最低限必要なものは、なんといっても「食べ物」ですからねぇ!

チェスト!!

参考資料:
南日本新聞社 2023年2月7日配信
農研機構とはどんなところ?
Mattock Life 食品の値上げはなぜ起きた?

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