日本で鶏の生卵が食べられる理由【後編】→販売店→購入者

生卵-すき焼き 食べ物こぼれ話

前編では、安全に生卵が食べられるために、養鶏場や加工施設(GPセンター)・流通の段階で、サルモネラなどの菌が付かないように、どのように取り組んで新鮮な卵を保ちながら販売所まで届くのかを紹介しました。
後編は、販売所で常温コーナーに置かれている理由、そして購入者が安全に生卵が食べられるように気をつけなければいけない保存方法などを紹介します。

どんなに養鶏場やGPセンターなどが、衛生面に気をつけて安全な卵を販売店まで届けても、購入者が保存方法を間違え腐らせたりして、生卵が食べられないのでは意味ないですもんね~。

スーパーなどの販売店で、常温コーナーに置かれていても大丈夫?

卵パック-エコバックの中

鶏卵は、直射日光を避け風通しの良い所で保管するなど、いくつかの条件をクリアすれば、常温保存が可能です。

スーパーなどの店で売られている卵は、ほとんど常温のコーナーに置かれているのはそれもありますが、もう一つ理由があります。
それは、気温や湿度の差を最小限にするためです。
例えばお店で冷やしてあると、真夏だった場合、暑い気温の中を移動して自宅に着き冷んやりした冷蔵庫に入れることになります。すると気温や湿度の高低が大きくなり、卵の殻の表面に結露が発生することがあります。

卵はじつはデリケートな食材で、殻に気孔という呼吸をするための小さな穴が無数にあります。結露が発生すると、その水分と共に雑菌も気孔を通じて卵の中に入り込んでしまう危険性があり、傷みやすくなってしまうのです。
できる限りそれを避けるために、常温管理で店内に置かれているのだそうです。

最近では、少しでも良いものを販売しようと、流通から販売まで一貫して冷蔵で管理され、店の冷蔵コーナーに置かれている卵もありますね。
これを購入したときは、常温販売されている卵以上に温度変化に気をつけ、出来るだけ早めに帰宅して即冷蔵庫に入れるか、保冷剤を付けてもらうようにしましょう。

卵の賞味期限

煮卵-茹で卵

生食を禁止しているほとんどの国では、加熱して食べることを前提に2カ月以上を賞味期限としていますが、日本で市販されている卵は、農林水産省の定めで、卵の賞味期限は生で食べられる期限で表示するようになっています。
賞味期限は季節によって異なり、夏期が産卵後16日以内、春秋期が25日以内、冬季が57日以内とされています。
スーパーなどでは、万が一菌が付いていることを考慮して、夏場でも安全な包装パックされてから2週間程度を、年間を通しての賞味期限としていることが多いようです。
この日本の賞味期限は、購入し帰宅したらすぐ冷蔵庫に入れ、冷蔵保存(10℃以下)することを条件に定められているそうです。

ですので賞味期限を過ぎた卵でも、加熱した(75℃以上、1分以上)ものであれば、2週間ぐらいは問題なく食べられます。
ただし、半熟卵や温泉卵・トロトロ卵は火の通りに注意し、茹で卵は黄身が固まるまで加熱してください。

卵は加熱すると吸収率が高まり、半熟卵の状態で吸収率が96%ともいわれていますので、栄養面では賞味期限内でも加熱して食べるのもオススメです。

自宅で保存する時に注意したいこと

卵は常温保存も可能です。
ただ、夏場など気がつけば気温が高くなっていた!ということも起こりえます。
「卵は10℃以下での保存が望ましい」と食品衛生法でもいわれていますので、購入し帰宅後はなるべく早く冷蔵庫(10℃以下)で保存するようにしましょう。

保存する時は、洗わずに冷蔵庫に入れてください。
結露と同じ理由で、殻に水分がつくと、その水と共に雑菌も気孔を通じて卵の中に入り込んでしまうからです。

ドアに卵置き場がある冷蔵庫もありますが、ドアは卵の保存場所としてはあまり向いていません。なぜかというと、ドアは頻繁に開け閉めする場所なので、振動で卵にヒビが入る可能性があり、また温度変化が大きいからです。

それから保存する時は、卵の尖った方を下にしましょう。丸くなっている方には気室があり、丸い方を下にすると気室内の空気と卵黄が触れやすくなるので、細菌が入り込む可能性があることと、尖った方が殻が厚めで強いのが理由です。

パックに入った卵-1

パックは尖った方を下に梱包されていますし、パックから出さないでいると水分も付きにくいです。手っ取り早い方法は、購入したパックに入ったそのままの状態で、食品表示を上にして、冷蔵庫の10℃以下の安定した奥の方に保存するとよいということですね。
卵ホルダーも市販されていますが、同じような状態で保存するとよいです。

なお、何かの拍子にヒビが入ったり、どこかにぶつけて殻が欠けてしまったモノは、腐りやすくなります。
賞味期限内で異臭も無く一見大丈夫そうに見えても、生食は避け、加熱料理で出来るだけ早く食べるようにしましょう。

もうひとつ、生卵は食べる直前に、加熱料理も調理直前に殻を割るように! 空気に触れる時間が長いほど菌は付着しやすく、増殖しやすくなるので、割り置きはしないようにしましょう。

腐っている卵の特徴

卵ホルダーなどに入れ保存していると、賞味期限をつい忘れてしまうこともあるかもしれませんので、腐っている卵の見分け方も紹介しておきます。

古くなってしまった卵の中身は、空気の比重が高くなるので、振るとばしゃばしゃと水が跳ねるような音がしたり、食塩水に浮くといわれていますが、実際は、殻を割ってみないとプロでも品質を見分けることは難しいのだそうです。
殻を割ってみると、新鮮な卵は卵黄が盛り上がっています。
古くなるほど卵はその盛り上がりが小さくなり、卵白も水っぽくなっていきます。横から見た時に、卵黄がフラットになっているのは古くなっている証拠ですが、異臭が無ければ加熱料理では食べられます。

腐っているのは、割ったときに卵黄と卵白が混ざり合った状態で出てきたり、割った瞬間に卵黄が崩れてしまうものです。さらに黒く変色し、強烈なニオイ(異臭)を放ちます。こういう卵は食べずに破棄しましょう。

あえて洗わず「無洗卵」で売られているものもある!

平飼い-養鶏場

洗浄していないのは、見た目、そして衛生的にあまり良くないと考えられており、上記したように市販されているほとんどの卵が、パックされる前に洗浄されています。
ですが、あえて洗わず「無洗卵」で売られているものもあります。
無洗卵は産み落とされてから洗われていないもので、平飼い卵や自然卵で、直売所などで紙のパックで売られていることが多いですね。

もともと卵は産み落とされた直後は、母鶏の輪卵管から分泌された粘膜に覆われており、すぐに乾き10μm=0.001mmという目に見えない厚さのクチクラ層になります。
ほのかに消毒液のような匂いを感じたり、殻の表面がザラザラしている卵がありますが、それがクチクラ層です。
このクチクラ層は「水分の蒸発を防ぎ、細菌などの微生物の侵入を防いでくれる」という、卵の本来の力を持っています。その力を信じて、あえて洗わないで出荷されているのが、無洗卵です。
クチクラ層は水に溶けやすく、洗うとすぐに失われてしまうので、無洗卵で販売している所では、基本的には洗わず汚れを取りません(よっぽど汚れが酷い箇所は拭くそうですが)。

購入し帰宅したら、洗わず即冷蔵庫へ。保存方法は「洗浄卵」と同じです。
殻が汚れていても外ですし、気にすることはないそうです。ただし、流通の段階でクチクラ層が剥がれてしまったり、サルモネラなどの菌が付着しているという危険はゼロではないので、気になるのなら、生で食べる時や加熱調理する直前に、軽く洗うとよいそうです。
そして、卵の殻に触ったらその後すぐに手を洗ってから、他の食材や食器などに触るようにしましょう。

まとめ

「日本で鶏の生卵が食べられる理由」を2回に分けて紹介しました。

内閣府食品安全委員会の研究で、 日本の卵の汚染確率は0.0029%という結果も出ているそうです。
養鶏場・加工施設(GPセンター)・流通・販売を通して、世界一ともいわれる細かい衛生管理、そして安心・安全な卵生産のための設備導入のおかげで、日本では生でも卵が食べられるんですね~。
鶏卵は、日本の宝物の一つといっても過言ではないでしょう。ありがたいことです。
とはいえ、汚染確率0%ではないわけで、賞味期限に注意し正しく保存しなくては、食中毒になってしまう可能性はあります。

ビタミンCと食物繊維が無いだけで、ほぼ完全栄養食品の鶏卵。
生で食べるだけでなく、和洋中を問わず色々な料理で大活躍している卵。これからも大事に美味しく食べていきましょう。

これだけ厳しく安心・安全に注意し工夫を凝らしながらも、なんとか「価格の優等生」を続けてきた鶏卵ですが、今年になって鳥インフルエンザや諸問題が起こり、入荷が難しく値段が上がってしまう事態が起きていますね。できるだけ早く、以前の状態に戻ることを祈るばかりです。

鶏卵の栄養と効能については、下記に詳しくまとめてあります。よかったら一緒にお読みください。

卵は、毎朝食もってるよ♪

目玉焼き-パン

参考資料:
食品安全委員会 生活の中の食品安全 -安心して生卵を食べられる国-
Macaroni 卵はスーパーだと常温保存!自宅で冷蔵庫に入れる必要ってない?
(株)落水正商店 卵を長持ちさせる保存方法は?常温?冷凍?丸い方を上?
ちそう 日本人が生卵を安全に食べられる理由とは?
食べいろナビ 腐った卵の見分け方

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