国内シェア70%以上の枕崎・指宿の鰹節。カツオの腹皮も美味しい

鰹節-出汁 製造物

鰹節の起源は、17世紀に紀伊の国(和歌山県)熊野浦の漁師が、土佐西野崎で鰹を大漁した際、それで節を作ったことといわれていますが、薩摩節はそれより前に、昔からトカラ列島で鰹を熟煮し燻して貯蔵していたことが、加世田の漁師によって伝わっていたともされています。

ただし鰹枯節の製造は土佐から伝わったそうです。
17世紀、土佐藩は鰹節を藩の特産品にしようと力を入れていましたが、江戸などの消費量の多い都まで運ぶには、すぐにカビが付くので売り物にならないのが悩みでした。しかし、ある種類のカビをつけると、他の悪カビが付かなくなることが発見されます。
土佐藩はこの技術を藩外不出としていましたが、薩摩藩は土佐節の改良に関わった紀州印南のひとりの漁民を招くことに成功し、その秘法を入手します。
これにより薩摩での鰹節の製造は盛んになったそうです。

現在は国内鰹節の70%以上が鹿児島産

それから300年以上たった現在、枕崎市が1位、指宿市が2位と、鹿児島県での鰹節生産量は国内シェアの70%を超えています。

鰹節-製造過程-枕崎
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枕崎の鰹節

枕崎市は鰹の水揚げ漁港があり、鰹節の生産業も300年以上という歴史があります。
鰹は春先に黒潮に乗り、枕崎・指宿の南方を通り北上します。
そのため江戸時代から枕崎沿岸では鰹漁が盛んでした。
平均気温が18度と温暖な気候が鰹節製造に適していること、煮熟に欠かせない良質な水が豊富なこと、焙乾・薫乾に必要な樫・クヌギ・椎なども近くで沢山調達できることなどが、鰹節の産地として発展した要因です。
それで、薩摩藩も収入源として鰹節生産を大切に保護していました。
市内には40軒以上の鰹節工場が点在し、朝早くから切った生の鰹を燻製する香りが漂っていて、車などで移動していても、この香りで枕崎市に入ったことがわかるくらいです。
製造量も多く品質も高いので「枕崎鰹節」としてブランド化されています。

指宿の鰹節

数年前までは山川港で水揚げされ、指宿市山川地区で製造されていたことから「山川産鰹節」と呼ばれていましたが、2017年から「指宿鰹節」として統一しています。
水産加工団地を中心に30社ほどの鰹節工場があります。
明治40年代に船の大型化が進んだ頃から山川港に鰹漁船が集まるようになり、鰹節製造が始まり盛んになっていきました。
指宿鰹節は、本枯節の製造技術が高く、見た目も綺麗な鰹節を製造することに定評があります。

どちらも高品質で安全・安心な鰹節作りを心がけていて、冷凍鰹を水揚げする港は非常に衛生的に管理され、鰹節製造工場も、食品衛生の管理基準である「HACCP」を取得するほど衛生管理が行き届いているそうです。

鰹節になる以外の部位も有効活用

鰹-腹皮

鰹節の原料となる身の部分を取り除いた後の残った部分「カツオの腹皮」。
昔は鰹節を作る枕崎周辺だけで食べられてきた部位ですが、最近知名度が上がってきていて、通販でも売っていますね。
塩焼きや天ぷらや唐揚げ、煮物や干物として食べられています。

他にも残った内臓や煮汁は専門業者により加工され、骨や眼窩脂肪からDHA・EPAやカルシウムを抽出して健康食品に、魚粉は養魚用飼料になります。

また、焙乾などで出る木灰は、灰汁抜き・囲炉裏資材・土壌改良材になり、これから先も鰹節を作り続ける循環型スタイルができているそうです。

購入する時の選び方

鰹は回遊魚で、春先から餌を食べながら北上する初鰹の時期と、秋にUターンして脂の乗って栄養を蓄えた戻り鰹の時期がありますね。
刺身で食べるのなら、脂の乗った戻りガツオの方が美味しいですが、脂が酸化することで風味が落ちてしまうこともあり、削ったときに粉になりやすいので鰹節作りには向きません。鰹節作りには、程よく比較的脂が少ない初鰹が最適だといわれています。

購入する時の選び方のポイントは、削り節の色を見て選びましょう。
ダシ用の厚削りは赤くツヤがあるもの、薄削りはピンク色のもの。白っぽい削り節は鰹の脂肪分が多いためで、ダシにすると濁りやすくなります。茶色っぽい削り節は、時間が経ち酸化して風味が落ちていることがあります。

本枯節-カビ付け

鰹本枯節と呼ばれちょっけど、
うま味が凝縮してるでなあ!

ですです!

うま味は枯れちょらんよ

世界で愛される鰹節に

和食ブームのおかげで、国産の鰹節は、近年東南アジアやアメリカへの輸出量が増えています。

ヨーロッパでも和食は人気があり、本物の出汁で作った和食が食べたいと望んでいる人も増えています。
しかし、鰹節を燻す過程で発生する化合物がEUの基準で厳しく規制されていて、完成品の鰹節を持ち込むことができないのが現状です。
そこで、枕崎市の製造業者10社がフランスに工場を建設し、2017年から本格的に現地で生産しています。
インド洋で漁獲した天然鰹を使って製造していて、これは鰹節作りに向いている体質らしく大方好評のようですが、コストがかかるため価格が高いというネックがあります。

ですので、枕崎鰹節製造の関係者も、もっと身近なものとして広く親しんでもらうためにも、輸出の夢は諦めてはいません。
鰹節本来の風味を損なわずEUの基準をクリアできる製造技術の研究が、2024年度までの実用化を目指して続けられているそうです。
近い将来、ヨーロッパで枕崎産の鰹節が食べられるようになったら、素敵でしょうね。

鰹節の特徴や栄養と効能は、下記にまとめてあります。

参考資料:
本物の本場 枕崎水産加工協同組合
本物の本場 山川水産加工協同組合
枕崎水産加工業協同組合
にんべん 鰹節の歴史

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