鹿児島の「酒」というと、まず芋焼酎がうかんできますね。
「サツマイモの生産量が多いから芋焼酎造りが盛ん」というよりは、鹿児島の特産品のひとつ(鹿児島県内でもよく飲まれていますが)なので、芋焼酎造り用に栽培しているサツマイモが多く、結果的に生産量が日本一になっているのだそうです。
焼酎は、穀物や果実などを発酵させて造るビールや日本酒のような「醸造酒」を加熱し、純度の高いアルコールを抽出した「蒸留酒」です。
焼酎には甲類と乙類があります。
甲類焼酎は蒸留を何度も繰り返して造るので、純度が高く無味無臭です。
乙類焼酎は蒸留機で一度だけ蒸留したもので、アルコール分の高さと、原料の風味が感じられる個性を持っていて、その中でも芋・麦・米・黒糖・蕎麦・紫蘇などを原料に造られたものは「本格焼酎」と呼ばれています。
鹿児島で芋焼酎造りが盛んになったのには理由があります。まずはその歴史を振り返ってみましょう。
鹿児島での芋焼酎の歴史

西アジアで発達した蒸留技術がシャム(タイ)から琉球(沖縄)を経由して、薩摩(鹿児島)に伝わったのは、16世紀初頭といわれています。
稗・粟・キビなどの穀類でも造られていましたが、米を原料にすることが主流でした。その頃、薩摩では米は非常に貴重だったので、あまり普及しなかったようです。
そこに登場したのが、薩摩藩11代藩主・島津斉彬公。
江戸時代後期、襲ってくる西洋列強に対抗するため、雨天でも発砲が可能である「雷汞」という砲弾や軍艦を作り出すために、機械工業の操業を急いでいました。
これらの武器を造るためには大量の工業用アルコールが必要ですが、当時の工業用アルコールは米焼酎を造る際に生まれるもので、米不足に悩まされていた薩摩ではアルコールを造ることは難しい状況でした。
そこで、島津斉彬公は安価で手に入りやすいサツマイモを使用してアルコールを造ることを思いつきます。
ついでにその時に余ったアルコールを薩摩の特産品にしようとし、飲料用にも利用できるように製造方法を改良するように命令を出しました。
これが現在の芋焼酎の起源となるのだそうです。
こうして出来た芋焼酎は、薩摩で爆発的に広がり、庶民も飲める酒として定着していきました。
その後もずっと美味しい芋焼酎造りの研究は進められています。
現在、鹿児島県内には100余の焼酎蔵元があり、銘柄は2000を超えるそうです。
原料となるサツマイモや麹の違い、製造方法の工夫などで、その銘柄ひとつひとつが「独自の味や風味、香りを持っている」というのは驚きですね。
飲み比べるのが一番いいのですが、あまりに銘柄が多いので、どれが自分の味覚と合うのか迷われる人も少なくないでしょう。
少しでもヒントとなるよう、超簡単ですが特徴を紹介します。
原料となるサツマイモの違い
芋焼酎を作るには、まず高品質で新鮮なサツマイモが必要ですね。現在芋焼酎に使用されるサツマイモは、なんと40種類以上あるそうです。
その中でも特に使用量の多いサツマイモの品種をいくつか紹介します。
黄金千貫(コガネセンガン)

芋焼酎用の品種の中で、最も多く使われているサツマイモです。
もともとはデンプン用の品種として1966年に開発されたそうですが、他のサツマイモよりデンプンを含む量が20~30%ほど高いので、収穫量と貯蔵性に優れていて、生産者にとっても栽培しやすい品種です。
香りと甘みのバランスが良く、ふんわりとした甘い香りと口当たりがまろやかなのが特徴。
ホクホクとして栗のような甘みがあるので、食用としても親しまれています。
ジョイホワイト
芋焼酎用に1994年に宮崎県で開発された品種。デンプン質も高く病害虫にも強いので、人気があります。
淡麗でフルーティな香りを持っていて、すっきり軽やか系です。
シロユタカ
これも芋焼酎用に改良された品種で「豊かな収穫を生む白い芋」という思いを込めて命名されたそうです。
黄金千貫と同程度のデンプンを含有していて、南九州を中心に栽培されていて収穫量も多く人気です。
ミルクのような甘い香りが特徴で、すっきりとした甘さで淡麗な味わいがあります。
ムラサキマサリ
シロユタカと紫芋のアヤムラサキを掛け合わせて開発された品種。
抗酸化作用のあるアントシアニンが豊富で、赤ワインのような香りと豊かな甘みが特徴です。
収穫量も多いので、焼酎の原料だけでなく、色素の濃さを生かした加工食品にもよく使われています。
紅さつま
高知県で作られた「土佐紅」を、鹿児島県で栽培しているのを「紅さつま」と呼びます。
しかし鹿児島県の気候風土の中で栽培されているうちに、その風土に合った甘くおいしい品種になりました。焼酎にすると、芋本来の甘みを感じられる仕上がりになるそうです。
青果用としても鹿児島県内で最も多く栽培されています。
安納芋
もともと種子島で栽培されていた安納芋は、糖度が高くねっとりとした濃厚さが特徴の品種。
皆さんご存知のように、焼き芋やスイーツの材料としても人気です。
安納芋で仕込んだ焼酎は、やさしい香りと上品な甘さがあります。
蔓無源氏(つるなしげんぢ)
今から百年ほど昔、明治大正期に多くの人に愛されていたサツマイモ「蔓無源氏(つるなしげんぢ)」。
数少ない在来品種のイモですが、時代の流れと共に収穫量の多いサツマイモに押され姿を消してしまいましたが、平成15年に品種保存の為に保管されていたわずか10本の苗を元に、復活に成功しました。
しっとりと粘性は強く、コクのある甘さでありながらベタつきが少ない、現在のイモにない甘さを感じるサツマイモだそうです。
それを原料にした焼酎も造られています。
麹の種類
麹は芋などの原料を糖分にするという仕事をします。
黄麹
日本酒に使われている麹で、芋焼酎造りが始まった頃はよく使われていました。
クエン酸を含まないので、しっかり低温管理をしないとすぐ雑菌が繁殖し、気温の高い鹿児島では扱いの難しい菌だったので、黒麹が出てくると、次第に使用が少なくなっていきました。
しかし、これを使って造ると、フルーティーな香りとすっきりとした味わいに仕上がるため、低温管理の技術が発達した現代、また使用が増えてきているようです。
黒麹
泡盛造りにも使用されていて、クエン酸を多く含み雑菌の繁殖を抑えるので、明治後半からよく使われるようになった麹です。
素材の個性が際立つドッシリと力強くキレのある味わいで、辛口に仕上がります。
白麹が出てくると使用が少なくなっていましたが、2003年頃に起きた第三次焼酎ブームで再びブレイクしました。
白麹
大正時代に黒麹の突然変異で出来た麹。
まろやかで口当たり軽やか。すっきりとシャープな味わいで飲みやすく、今の焼酎の主流になっています。
芋麹
上記の黄麹・黒麹・白麹は米の麹ですが、芋で作った麹です。
サツマイモはデンプンの含有量が少なく麹を作るのは難しかったのですが、研究を重ね誕生しました。
100%サツマイモで造られた焼酎になるので、芋の風味がダイレクトに感じられるハードな味わいになります。
酵母の種類
酵母は英語でイーストという菌類で、上記の麹と並んで焼酎造りに欠かせない菌です。
麹が作った糖分を発酵させアルコールを作り出すという役目があります。
ここで使用する酵母の種類の違いで、焼酎に様々な香りを添えることができます。
鹿児島で使われている酵母は、主に鹿児島県酒造組合(開発機関:県工業技術センター)の「鹿児島2号・4号・5号・6号」。
また、フルーティーな香りを添える吟醸酵母や花酵母、ワインのような香りを添えるワイン酵母を利用した焼酎も、近年増えてきているそうです。

常圧蒸留と減圧蒸留
常圧蒸留は、昔ながらの蒸留方法で、高い温度で蒸留するため原料芋本来の香りや風味が残り、癖のある仕上がりになります。
減圧蒸留は、低い温度で蒸留するので、芋臭さや雑味を抑えたスッキリしたソフトな仕上がりになります。
長期熟成
一般的に芋焼酎は1~3ヶ月貯蔵・熟成させると出荷となるのですが、それより長期間熟成させることにより、芋の香りが深くなり、濃厚かつ芳醇な味わいになります。
蔵元により貯蔵方法にも違いがあり、香りや味わいも独特なものに変化します。
新焼酎
長期熟成とは逆に、10月頃発売される「新焼酎」というのもあります。
その年の秋に収穫されたサツマイモを仕込んで熟成前の出来立てを味わうというものです。
ワインでいうボージョレヌーボーのような感じですね。
採れたての強いイモの香りや味わいがあるのに軽くてライト。最近ファンも増えているそうです。
原酒
原酒とは、蒸留した後の本来の焼酎です。
アルコール度数が40度前後と高く、焼酎本来の濃厚な香りと味わいがあります。
日本ではお酒を食事と一緒に楽しむことが多いですが、それには40度は高く感じます。
それで一般的には割り水などの調整をして、アルコール度数を25度にして完成品!とするのですが、それをしていないものです。
濃過ぎて飲めないと感じるなら水やお湯で割ってもよいですが、せっかく原酒を飲むのであれば、ウィスキーなどのようにストレートやロックで、食事とは別にリラックスして飲むのがオススメです。
無濾過
「無濾過」と表示された焼酎もありますね。
焼酎の原酒には、匂いを発するフーゼル油や雑味が残っており、これが多く含まれている焼酎は風味が落ちるということで、一般的には濾過します。それをあえてしていない焼酎です。
昔は濾過技術が発達していなかったので、濁りがありとても芋臭かったのですが、時代のトレンドに合わせて濾過技術が飛躍的に進化し、飲みやすく変わってきています。
しかし「昔みたいな臭い匂いで、同じ旨みの焼酎が飲みたい」という人もおられるので、あえて濾過せず出荷しているものだそうです。

何を悩んじょんの?

種類が多かでなあ、
今日はどいで「だいやめ」しようか
考えちょった
このように、芋・麹・酵母の種類、蒸留や貯蔵の仕方、また蔵元や杜氏のこだわりの違いにより、とても種類が豊富です。
2000銘柄以上ある、というのもうなずけますね。
ですので、ご自分の好みの傾向で、じっくり探していると、とっておきの1本に出会えるかもしれません。



